「監督が使える駒になる」を重視した藤川は先発、セーブ、中継ぎをこなし、記録的には損もした。名球会入りの条件になる250セーブ(日米通算)まであと「5」だ。

 会見では、ともに戦い続けてきた矢野監督に対し、こんな思いのこもった言葉を投げかけた。

「(引退の意思を)矢野監督ではなく矢野さんに伝えました」。現役でバッテリーを組み、意思が通じ合った捕手に報告したことを強調した。当の矢野監督は「直球とわかっていても打てない魔球を誰よりも多く受けたのは誇り」と話した。

 2軍で調整中の藤川には5セーブ達成は容易ではないが「入団の時、3回優勝すると言ったのに2回しかしていない。今年はチャンス。まだ頑張ります」と前向きだ。

 記録より記憶に残る男は「残り火」をどう見せてくれるか。

(ジャーナリスト・粟野仁雄)

*週刊朝日オンライン限定記事