学校の全国一斉休校やアベノマスクなど、安倍政権のコロナ対策では専門家の意見を聞かずに決めたことが、たびたび批判を受けてきた。そこで今回は形だけでも「専門家の了承を得た」ということなのか。これに対して分科会の関係者は「専門家が都合のいいように使われていて、これでは政権から独立して対策を提言できない。分科会は、政府が決めたことを追認する組織ではない」と不快感を隠さない。

 東京除外には政治的な思惑も見え隠れする。

 コロナ対策をめぐっては、官邸は小池百合子東京都知事と繰り返し対立してきた。7月11日には、菅官房長官がコロナの再流行が始まったことについて「圧倒的に東京問題と言っても過言ではない」と東京都を批判。対する小池都知事は、GoToキャンペーンを引き合いに出し、「冷房と暖房の両方をかけることについて、どう対応していくのか」と皮肉った。

 東京都関係者は言う。

「東京だけ除外を決めた時には、菅官房長官は千葉県や神奈川県に政府の方針に賛成するよう根回しをしていた。横浜市や千葉市に比べれば、東京の都心以外の地域のほうが感染者は少ない。東京だけ一律除外したのは、官邸が小池都知事にやり返したかっただけですよ」

 あからさまなやり方に、小池都知事も周囲に「また菅さんにいじめられちゃったわ」と話しているという。国会でキャンペーンの早期実施に反対した東京都医師会の尾崎会長は、こう話す。

「専門家の役割は、第三者の立場で感染症対策を提言すること。それに対して政治家の仕事は、提言を受け入れるか、不採用にするかを決めて、その理由を説明することです。ところが、安倍首相は国会を開かず、記者会見でも説明しない。政治家は、もっと日本を救うための議論をすべきです」

 尾崎会長は、医療機関の負担を軽減するため、全国の主要都市にコロナ専門病院の開設が必要だと考えているが、政府の動きは鈍い。一方、安倍首相は100兆円を超えるコロナ対策予算を「世界最大」と自画自賛する。その予算が感染拡大の原因となってしまっては、本末転倒ではないか。(本誌・西岡千史/今西憲之)

週刊朝日  2020年8月28日号

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今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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