東尾修
東尾修
巨人・菅野智之の進化し続ける姿勢を見習ってほしい (c)朝日新聞社
巨人・菅野智之の進化し続ける姿勢を見習ってほしい (c)朝日新聞社

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、昨今の投手の傾向に苦言を呈する。

【写真】巨人・菅野智之投手

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 どのメディアを見ても、プロ野球の話題は打者ばかりとなっている。そりゃそうだ。巨人岡本和真ヤクルト村上宗隆など若くて才能あるスラッガーが増えている。以前も指摘したが、各球団の4番打者が本塁打も量産している。

 飛ぶボールなのか、という指摘もある。実際にプレーしている選手にしかわからないことだろうが、「打高投低」の現象が出ると必ず議論される。

 テレビや解説者として球場で試合を見た時に感じるのは、打者のスイングが強く、大きくなっているということだ。ファンの方もそう思うはずだ。クリーンアップを打つ選手だけではない。コンタクトヒッターでも「強く振る」ことができている。以前のように「ちょこんと」当てて打つヒットよりも、しっかり振り切る選手が増えている。

 一方で、投手はどうだろう。体全体を大きく使ってダイナミックに投げるというよりも、セットポジションからバランス重視で投げる投手が目立つ。頭の上に振りかぶるワインドアップか、胸の位置で動き出すノーワインドアップかはどちらでも良いが、走者もいないのに、最初からセットポジションを選択する投手が増えすぎている。

 そのセットポジション。右投手なら左足を上げた際に軸足となる右足でしっかりと立てる。つまり安定するということだ。しかし、それでは、体を大きく使う形にはならない。セットでも、ほとんどパワーの出力は変わらないという意見もある。ただ、最初から「安定性」を重視して、可能性を消していないだろうか。打者がどんどん「強く、大きく」なっていくのに対し、投手はどんどん「こぢんまり」となっている。

 若い投手こそ、体を大きく使うことを目指してもらいたい。20歳代前半の投手が安定を求めてどうする。体のどこを鍛えれば、もっとダイナミックに投げられるのかなど、見つめ直してもらいたい。30歳前後になって完成された投手が、どう投げようと構わない。体を大きく使う中で、バランスを探る。その作業を捨ててしまっては、スケールの大きな投手にはなれない。

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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