林:ところで社長、体形がスリムで、ぜんぜんお太りにならないですね。鍛えてらっしゃるんですか。

角川:週2回ボクシングに行ってるんだけど、今も私がいちばんラウンド数が多いんだよね。一時は50ラウンドを2度超えたりして、4時間戦ってるとかね。

林:前の奥さまとのお孫さんもいらっしゃって、そして7歳のお子さんもいらっしゃるわけでしょう。昔からびっくりしっぱなしですよ(笑)。老いを感じたことはありませんか。

角川:ない。ボクシングジムに行っても、自分がいちばんスタミナがあって体力もあって、そういう点ではみんなに尊敬されてしまってる。一時は剣術に行ったんだよね。2・5キロの木剣を3万3100回振るわけ。

林:月にですか。

角川:いや、一日に。トイレに行くのとごはんを食べる以外は振りっ放しなんだ。3万3100回振るなんて、人間としてあり得ないんだよ。だから過去の剣術家と戦ったとしても負けるとは思えないし、いま現役の剣術家とか剣道家と戦って、負けるとはまったく思わないね。日本で最強の剣術家だと思う。

林:ゴルフとか、ふつうの趣味は持たないんですか。

角川:趣味はないというか、俳句が自分の職業でもあるんでね。

林:句集『信長の首』ですごい賞をおとりになったんですよね(芸術選奨文部大臣新人賞、俳人協会新人賞)。

角川:あのあとも賞をとり続けた。俳句は生涯できるんでね。今回は「天高し詩歌に映画に身を尽くす」という句が、映画のクランクアップの日に降りてきて、自分は映画と詩歌は生涯続けるんだなと思ったね。大林さんが亡くなったと聞いてすぐできた句があって、4月10日に亡くなったので、「監督の椅子に君なき四月かな」という句をつくった。もう一つは「龍天に昇る映画といふ麻薬」。

林:ほォ~、麻薬ですか。

角川:映画とか小説は、私にとって麻薬だと思ってる。そこから離れられないというか。

林:私も、書くのは楽しくて、これがないと生きていけなかったなと思います。

角川:すごいと思う。君が『西郷どん!』を書いたときに、まさか君が時代小説を書くとは思ってなかったんだよ。読んでみてさらにびっくりした。相当の力があるなと思った。

林:ありがとうございます。おかげさまで歴史時代作家クラブ賞をいただきました。

角川:最近私は、子どものことを詠んでる句が多いんだよね。「鴉の子」というのは春から夏にかけての季語なんだけど、今回、林君の『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を子どもの句にくっつけたわけ。「ルンルンを買って七つの鴉の子」という。子どもが7歳だから。

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