合格者が大きく増えた豊島岡女子学園
合格者が大きく増えた豊島岡女子学園
増加する女子校の医学部合格者数 (週刊朝日2020年6月5日号より)
増加する女子校の医学部合格者数 (週刊朝日2020年6月5日号より)

 2018年に女子や多浪生を差別する不正入試が発覚したが、近年はその女子や多浪生の合格が増加。他方で、新たな差別が温存されているという指摘も──。

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 18年に女子・多浪差別で揺れた医学部受験だが、現状はどうなっているのか。

「2年前と比べて女子差別や多浪差別が見直されてきたように思う」

 こう語るのは今年から都内の私大医学部に通う女子学生だ。医師に憧れ、医学部専門予備校に通いながら、2浪の末に合格した。

「私の大学も友達が通う医学部も、女子の割合が格段に増えました。私たちが合格できた要因の一つに差別が見直されたことがあると思っています」(女子学生)

 実際、女子の合格者数は増えている。女子校の上位20校の医学部の合格者数は、差別が発覚する前の18年は938人。16年から18年の平均でも956人だった。それが19年と20年は1100人を超えており、平均は1175人。差別発覚前と比較して、23%も増加している。

 個別に見ても、合格者が大きく増加している学校が目立つ。豊島岡女子学園は18年に107人だったのが、今年178人、女子学院も50人だったのが100人と増えた。その他の高校もここ2年で増加基調にある。学校の現場からは「実力のある女子生徒が明らかに評価されるようになった」という声があがる。

 多浪差別も緩和されたという見方もある。

「ここ2年間は多浪生の合格が明らかに増えています。8浪、9浪でも合格したケースが複数ある」

 こう話すのは私立医学部・歯学部専門予備校メルリックス学院の鈴村倫衣学院長だ。多浪生は入学後の留年率が高く、医師国家試験の合格率が低い傾向があるとされ、入試で得点を抑制されるなど不公平な扱いをされてきた。

 女子差別も年齢差別も状況は改善したが、鈴村学院長は「差別は形を変えて残る恐れがある」と指摘する。注目するのは推薦・AO入試(推薦型・総合型選抜)の増加だ。例えば、卒業後の勤務地が長期間、特定の地域に限られる「地域枠」について、今春の入試で北里大が昨年まで一般入試で募集していた9人の地域枠を推薦入試に切り替えた。聖マリアンナ医科大も入学後に募集していた地域枠5名を推薦入試に充てた。いずれの入試も現役生を対象にしたものだ。

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