数え99歳になった瀬戸内寂聴「長生きも、ほどほどがいい」 (1/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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数え99歳になった瀬戸内寂聴「長生きも、ほどほどがいい」

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週刊朝日
瀬戸内寂聴(せとうち・じゃくちょう)/1922年、徳島市生まれ。73年、平泉・中尊寺で得度。『場所』で野間文芸賞。著書多数。『源氏物語』を現代語訳。2006年文化勲章。17年度朝日賞。

瀬戸内寂聴(せとうち・じゃくちょう)/1922年、徳島市生まれ。73年、平泉・中尊寺で得度。『場所』で野間文芸賞。著書多数。『源氏物語』を現代語訳。2006年文化勲章。17年度朝日賞。

横尾忠則(よこお・ただのり)/1936年、兵庫県西脇市生まれ。ニューヨーク近代美術館をはじめ国内外の美術館で個展開催。小説『ぶるうらんど』で泉鏡花文学賞。2011年度朝日賞。15年世界文化賞。(写真=横尾忠則さん提供)

横尾忠則(よこお・ただのり)/1936年、兵庫県西脇市生まれ。ニューヨーク近代美術館をはじめ国内外の美術館で個展開催。小説『ぶるうらんど』で泉鏡花文学賞。2011年度朝日賞。15年世界文化賞。(写真=横尾忠則さん提供)

 半世紀ほど前に出会った97歳と83歳。人生の妙味を知る老親友の瀬戸内寂聴さんと横尾忠則さんが、往復書簡でとっておきのナイショ話を披露しあう。

【横尾忠則さんの写真はこちら】

*  *  *
■横尾忠則「姿くらまし、案ずる人々眺めるのもよし」

 セトウチさん

 死んだふりして誰が本気で泣くか、泣かないか、チェックするんですか? 死んだら、誰が泣こうが、笑おうが、どうでもいいことだと思いますが、さすが作家の考えることは違いますな。こんな作家とつき合う編集者も戦々恐々、今から泣く稽古しなきゃいけない、でないと化けて出られますからね。幽霊は長い髪をザワーッと垂らして出てくるのが相場ですが、坊主頭の尼さんのテカテカ光った頭の幽霊も恐ろしいかも知れません。

 死んだマネもいいけれど、どこかへ姿をくらまして、金髪のカツラをかぶって変装して、時々、寂庵の近くに帰ってきて、みんなが心配してオタオタしている様子を物陰から眺めて、ニタッとするのも悪趣味で、こちらもいいと思いません? 死ぬよりも、消息不明になって人騒がせをさせるのも、ちょっと犯罪者気分が味わえて、「逃亡者」という題名で心理推理小説を書いて、匿名で、文学賞に応募して、賞を獲(と)る。勿論(もちろん)、授賞式は欠席。今、美術界を騒がしている覆面アーティスト、バンクシーみたいになるのもいいけど、どうぞ勝手に死ぬなり生きるなりして遊んで下さい。

 実は僕は若い頃、死亡通知を新聞に掲載して、首吊(つ)り自死の作品を描いて、「遺作集」と題した画集を出したことがあるんです。そんなパフォーマンスを寺山修司が面白がって、僕がニューヨークにしばらく滞在している間に、友人を沢山(たくさん)集め、妻にまで喪服の格好をさせて、青山墓地の他人の墓の前で、お葬式を演出して、記念写真まで撮ったんですよ。もう今は、こんな悪趣味を本気で遊ぶアホなことをする寺山みたいな友人もいなくなって、面白くない真面目人間ばかりが生き残って、コロナコロナと怯(おび)えています。


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