息子の真輝君とコミュニケーションをとる野田聖子氏(本人提供)
息子の真輝君とコミュニケーションをとる野田聖子氏(本人提供)

 障害児がいる家庭にとって、新型コロナウイルスは大きな脅威。衆院議員の野田聖子氏(59)もそう感じている一人だ。50歳の時に授かった息子の真輝君(9)は、医療機器がなければ生きられない医療的ケア児のため、毎日がハラハラだという。このコロナ禍の間、議員でもあり、障害児の母でもあるからこそ気がついた課題などを語った。

【写真】コロナ禍に自粛できなかった昭恵氏…

 
「私たち夫婦ががんばっても、ウイルスがどこから侵入してくるかわからないですからね。感染拡大が報じられた当初から、この子が陽性になったら、私たちが陽性になったらというのが野田家の一番の脅威でした。国会に出て、もしも、私が陽性になってしまったら、自宅に持ち帰ってしまったらと考えると、先が見えないんですよ」

 真輝君は、へその緒の中に臓器が出たままの状態で生まれた「臍帯(さいたい)ヘルニア」、心臓に向かう血管の数が足りない「心臓疾患」、生まれつき胃につながる食道が途中で切れてしまっている「食道閉鎖症」など重複障害があり、これまで十数回の手術を受けた。

「息子は胃ろうですし、うちの寝室は、集中治療室(ICU)みたいに人工呼吸器が置いてあります。だから、コロナ騒動の前からずっと『瀬戸際』です」

 生まれてから2年3カ月は入院生活を送り、退院してからの7年間は夫と在宅看護をしてきた。野田氏と夫と真輝君の3人家族。新型コロナの感染拡大の影響で学校が休校になり、こんな悩みも。

「息子は自宅にばかりいると、ストレスで私を殴るんです。知的障害もあって、言葉を上手にしゃべれないので、何を言っているのかわからない時に、何回か繰り返して聞くと、頭に来てパーッと手が先に出ちゃう。痛いし、息子にぶたれるのがどんなにつらいか」

 緊急事態宣言は徐々に解除されているが、3密を避けるための“半自粛”は長期化しそうだ。医療的ケア児にはどんな対策が必要なのだろうか。

「息子が生まれてからずっと、ウイルス感染には神経を使ってきました。息子の命にかかわるので、消毒液やマスクの備蓄は当然のようにやっていたことなんです。他のご家庭で息子よりも重篤な方たちは、より多くの消毒液を使います。マスクには国のほうでも、早くから取り組みましたが、消毒液が後手に回ってしまったのは問題が残りました」

著者プロフィールを見る
上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

上田耕司の記事一覧はこちら
次のページ
コロナ患者の在宅医療についての議論を