来ていたお客の一人は、本誌の取材にこう語った。

「コロナ感染は怖いが、店が開いたら、つい来てしまいます。飲み屋は閉まって酒が飲めない。あとパチンコしか楽しみがあらへんやん。飲み屋のほうがパチンコより小さい場所やから三密や。パチンコくらい大目に見てくれへんかと思うわ」

 だが、吉村知事は粘り強く要請を続け、府内のパチンコ店に休業を受け入れさせた。営業を続けていたパチンコ店の近所に住む府民はこう安堵の表情を浮かべた。

「誰がコロナかわからない状況で大勢の人が来ていたから休業してくれて、本当によかった」

 当初、休業要請を無視して営業していたパチンコ店のオーナーは本誌の取材に対し、”敗北”をこう語った。

「何度もマスコミさんに説明していますが、パチンコは固定費がかかる商売。うちなら1店舗あたりパチンコ台のリース料、月300万円、人件費300万円、電気代130万円と、維持費にお金がかかります。休業要請に従っても補償はない。あってもわずかな額だけです。政府系金融機関や保証協会は、パチンコ店が風俗業だと融資の対象から除外しています。お金を返すから一時的に金を貸してとお願いしても審査が通らない。ならば、吉村知事ににらまれても営業したろうやないかとなるんです。しかし、従業員は感染不安を訴えるし、吉村知事の親分、橋下徹さんもテレビやSNSでパチンコ店は休業せよ、と言っている。もうお手上げ、あかんと悟りました」

 大阪府内の感染者数が減ることを祈るばかりだ。(今西憲之)

※週刊朝日オンライン限定記事

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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