生徒さんたちが考えることは子どもたち自身も昔に思ったことですが、教える側からは幼く見えたり、またそれがかわいいと思えたりしたようです。物事は多面的で立場や見方によって変わること、自分の意見に固執せずさまざまなアプローチで考える必要があることを実体験から学んだのではないでしょうか。医師になっても患者さんの気持ちになって考える重要さが身にしみたと思います。これは、授業や机の上の勉強だけでは学べないことです。

 大学生になると子どもは自然と自立してきますが、それでも親は子どものことを気に留めておくほうがいいですね。いずれ大学や大学院を卒業したら、子どもは一人で社会に出ていかなくてはならないのですから。

 例えば、就職に関する情報をネットで収集してあげるのもいいです。また、日頃から新聞などのニュースについて親子で話し合うことも大切。時事問題を考えることは、自分が生きている時代について考えることになりますね。世の中で起きていることに対し、自分の頭で考え、自分の意見を言えるようになることは大事です。就職の面接ではさまざまな質問をされますから、子どもが自分の考えを明確に言葉で表現できるように、親子の会話を大切にしてほしいです。

 もう、一人前の大人として話し合えますので、発展した親子の関係を作り上げるチャンスとなります。大人の先輩として、大いに親の世代の意見を伝えてください。

(構成/庄村敦子)

週刊朝日 2020年4月10日号