自分自身で変わろうという意識は生まれてきたが、最も大事なことは変わっていないという。

「それは歌に対する思いです。僕の歌を聞いてくれる人に喜んでもらうことが一番大切という基本的な気持ちはずっと変わっていません。だからもっと歌を磨きたい。歌唱力を上げることです。それは単に技術的なことではなく、表現力。つまり自分の人間性や生き方を、歌を通じて表現できるようになりたいのです。そのためには普段の生活も大事なんだと肝に銘じている。ステージに立っている時だけが歌手の仕事ではないということです。“一日にしてならず”ですからね」

 以前のインタビューでは「僕はツアーアーティストであり続けたい」と話していたが、その気持ちは変わらない。ファンとコミュニケーションができるコンサートを大事にしている。昨年は47都道府県すべてを回るコンサートツアーを行ったが、今年も3月10日の東京・中野サンプラザホールを皮切りに全国を回る。6月には大阪・新歌舞伎座でデビュー20周年特別公演を26ステージ行う。

「20周年の今年は、ただでさえ“おめでとう”と言ってもらえる。だからこそ、このツアーを通じて21年目以降も“頑張って突っ走る”という僕の意思表明を感じてもらえるコンサートにしたいと思っています。周年のうちに(日本)武道館の舞台に立ちたいという希望もあります」

 3月11日には20周年記念曲「残照」も発売される。

「節目の年にふさわしい曲に巡り合うことができました。この楽曲は新しい山内惠介を見てもらうための一つになると感じています」

 新しい自分──20周年を迎える貴公子が模索しているもののようだ。

「ダンスをしたり舞踊をしたり、新しいことに挑戦することも大事ですが、やっぱり自分は歌に生きたい。だから一番大切なことは、歌で山内惠介を感じてもらうことなんです。お客さんの心を鷲づかみにするような、“山内惠介の代表曲”といわれる曲を作りたいという思いが、今は一番強くあります。この『残照』を育てて、自分の人間性や生き方まで歌で表現できるようになりたいんです。そのためにやるべきこと、考えるべきことがいっぱい。悩める36歳なんです(笑)」

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