人生も後半になれば老化が進みます。老化とは昨日できたことが、今日はできなくなるということですから、無力感が拡大するのは当然のことです。老化と向き合いながらも、効力感を持ち続けるためには、どうしたらいいのでしょうか。

 それには二つのことが必要だというのです。

 一つは自律性の感覚です。つまり私が自らはじめたという感覚です。人間には自分は自分の行動の源泉でありたいという気持ちがあり、行動の主人公でありたいというのが基本的な欲求だというのです。

 他人から言われてやったり、報酬のためなど見返りを求めて何かをやったりしても、効力感は得られません。何より自分はこれをやりたいと、内からの欲求で選び取ることが大事なのです。

 もう一つは他者との暖かい交流です。自分がやったことを周りが認めてくれて、関心を持ち感謝してくれる。こうしたことにより、自分に存在意義を感じて、生き生きした活動を生み出すというのです。

 年をとるにつれて、やりたいことがなくなったり、周りとの交流が少なくなったりしていないでしょうか。それでは効力感を持てません。

 ナイス・エイジングにとって、大敵であると自覚すべきなのです。

週刊朝日  2020年2月21日号

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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