林:つまんでどかしてやろうと思わなかったんですか。

生瀬:噛むかもしれないし(笑)。うちに運んでも、うちはこのあいだからがいるし。犬が少し前に死んじゃったんで、猫を買ったんです。

林:うちもこのあいだ10年飼ってたトイプードルが死んだんですけど、何犬ですか。

生瀬:ビーグル。僕はスヌーピーが好きで、ビーグルを飼って18年愛して、死んでも絶対に泣かないぞと決めて、泣かなかったんです。

林:うちの夫は、犬が死んだときずっと泣いてましたよ。

生瀬:僕が泣くとしたら、愛が足りなかった、もっと散歩に連れてってあげればよかったのにとか、そういう後悔があるときですね。生きてるあいだにすべての愛を注いであげれば、死に対しても「よかったね」と言ってあげられる。そんなふうに気持ちをコントロールするんです。やっぱり役者なんでしょうね。最愛の犬が死んでも泣かない人間をつくろうとしたんです。

林:そういう人が恋愛をすると、どんな感じなんですか。「この人が好きだ」と思う自分をつくろうとするんですか。

生瀬:そう。

林:ヤな感じ(笑)。よく結婚なさいましたね。

生瀬:結婚してもう23年ですけど、別れてないし、別れるつもりもないし、唯一彼女は僕の作品をすべて見てる人で、忌憚のない意見を言ってくれるし、彼女といま一緒に暮らしているのは、ただ愛してるとかだけでなく、彼女に対するリスペクトがあるからですよ。あと、息子ができましたしね。僕はほんとに頭でものを考える人間なんです。

林:外ですごくきれいで魅力的な女性に会っても、心を動かされずにコントロールしている自分が好きなんですね。

生瀬:そう。なるべく人を傷つけないし、罪も犯さないし。

林:もちろんクスリもやらないし。

生瀬:葛根湯ぐらいしか飲まないし(笑)。社会人としてちゃんとしていたい。そして平和を重んじる。僕、好き嫌いが激しいんで、気に入らない人はいっぱいいるんです。だけど、気に入らない人とは仕事しなきゃいい。しゃべらなきゃいい。何カ月かしたらお別れするんだから。

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