
1989年12月9日に死去した開高健は、芥川賞を受賞した直後の若き頃、先輩作家に「小説だけでなく、ルポを書きなさい」と助言を受けた。それに導かれるように、33歳頃から本誌に、「ずばり東京」「ずばり海外版」「もっと遠く!」「もっと広く!」と精力的にルポの執筆をした。
作家の開高健が永眠して、この12月9日で30年になる。生前、開高は「週刊朝日」に画期的な連載を何本も執筆した。
中でも1964年から65年にかけて南ベトナム軍に従軍して書いたルポは、本人が「死を覚悟した」と語るほど危険な状況で書かれ、現在まで読み継がれている。
64年頃の東京をテーマにした連載が、「ずばり東京」だ。高度成長が孕(はら)む都市の矛盾を、様々な文体を駆使して表現した。79~80年に南北アメリカ大陸を旅した記録、「もっと遠く!」「もっと広く!」は、「釣り」を通して人と自然に触れ、世界の表と裏を伝えた。(本誌・文/工藤早春)
■「もっと遠く!」「もっと広く!」(1980~1981年)
南北アメリカ大陸縦断の旅の記録。紀行文として、また、すぐれた文明批評として名高い。
■「ずばり東京」(1963~1964年)
今から55年前、日本で初めて開催されるオリンピックを前に、刻々と表情を変えていく東京を活写。
■「ずばり海外版」(1965年)
ベトナム戦争中のジャングル戦を取材。死を覚悟し、同行したカメラマンとお互いに撮影をしたこともあった。
※週刊朝日 2019年12月20日号