なぜか? 映画「ジョーカー」を見に行ったとき。友達数人と六本木ヒルズに集まりました。その時間、ラグビーW杯の日本戦がやっているときでした。映画が始まるまであと20分。友達の一人が言いました。「ラグビー日本戦見たいわー」と。だけど見ることはできない。もし今見ることができるならギリギリで試合の最後まで見ることができる。だけど、スマホでは生は見られない。あんなに便利なスマホでも地上波放送をリアルタイムで見ることができない。

 そんなとき、僕はガラケーを出しました。まるでドラえもんのように。「これで見られる」と。そうです。ガラケーにはワンセグが入っているのです。つまり地上波のテレビをリアルタイムで見ることができる。ワンセグの設定にすると、ガラケーの画面にはラグビー日本代表の雄姿が。そこで友達は言いました、「ガラケー、すげーーーー」と。こんなにも堂々と人前でガラケーを自慢げに出せたのはいつ以来でしょうか? ガラケーだとテレビが見られる。これです。

 なぜガラケーを使うのか?にたいして最大の答えが見つかった気がする。ガラケーユーザーはこうやって理由をつけて使い続けるのだ。がんばろう! ガラケー!

週刊朝日  2019年11月8日号

著者プロフィールを見る
鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

鈴木おさむの記事一覧はこちら