台東区では、「ホームレス」とみられる人が、避難所での受け入れを12日に拒否された。台東区の広報担当者は、「住民のための自主避難所だったのでお断りした。結果として援助対象から漏れてしまった」という。

 ほかの自治体では今回のような緊急性のある場合は、住民以外でも基本的に受け入れている。台東区では避難所をこれまで開設したことが少なく、「住民以外にどう対応するかの観点がなかった。これからの課題として検討したい」(同担当者)としている。

 今回の台風では計画運休のため、駅や地下鉄施設などが早い段階で閉鎖され、雨風をしのげる場所が少なかった。12日夜には台東区内の上野駅や浅草駅周辺で、ビルの入り口などでうずくまる複数のホームレスとみられる人たちがいた。区の対応には批判が相次いでおり、今後責任が問われそうだ。

 避難では外国人観光客らへの対応も課題となる。民泊など、避難誘導者がいないところに泊まっている人もいる。12日の都心では交通手段がなく、風雨の中でタクシーを待ち続ける外国人の姿も見られた。

 ホームレスの対応で問題が発覚した台東区だが、浅草・雷門前の「浅草文化観光センター」に、外国人観光客の緊急滞在所を開いた。上野公園の「東京文化会館」も台東区の要請によって外国人ら向けに開放された。ラグビーW杯で多くの外国人が来日しており、来年の東京五輪・パラリンピックも控えている。日本語が通じず災害情報が届きにくい外国人へのケアが課題となる。

 交通手段や食料の確保、避難所の態勢や外国人への配慮など、今回の台風の教訓はたくさんある。今も続く人命救助が最優先だが、行政には検証と対策が求められそうだ。(本誌・多田敏男)

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