「ブラック企業」の経営者だとして一時強い批判を浴びた人が、約6年を経てトップに復帰した。
【画像】ワタミが会見で配った資料。ホワイト企業の認定基準を満たしているとアピールしている
居酒屋チェーン大手のワタミグループ創業者で元参院議員の渡辺美樹氏は、同社の会長兼グループ最高経営責任者(CEO)に10月1日付で就任した。都内のホテルで7日に会見した渡辺氏は、新しい経営体制や事業戦略を発表した。会見に多くの報道陣が詰めかけた背景には、同社がブラック企業だと指摘されてきた経緯がある。
同社を巡っては2008年に、居酒屋チェーン「和民」に勤めていた女性新入社員が過労自殺した。連日の長時間勤務で残業が月140時間を超えており12年に労災に認定された。
遺族が会社側の責任を追及し損害賠償を求め提訴したが、渡辺氏は当初、「道義的責任はあるが法的責任はない」などと主張し争っていた。ブラック企業に警鐘を鳴らす団体によって、13年に「ブラック企業大賞」に選ばれるなど、経営姿勢に批判が高まった。
その後、会社側は法的責任を認め、遺族と15年12月に和解。渡辺氏も、「自らの経営理念が過重労働を強いた」と認めたという。
渡辺氏は参院選比例区に自民党から立候補するため13年に経営から退いていた。こうした経緯があるだけに、会見では冒頭に次のように述べた。
「私および当社が数年前にブラック企業批判を受けたこと、その後、経営危機と言われるまで経営状況が悪化したことについて大いに反省している。過去の指摘はすべて受け入れたい。過去を変えることはできないが、自らの未来を変えるべく新しいワタミを始めたい」
復帰によってブラック企業に戻るのではないかとの質問もあった。これに対してはこう答えた。
「反省すべきところは反省する。今までのことは一切振り返らない」
会見で配られた資料では、「ホワイト企業」に生まれ変わったとアピール。企業を評価する団体から「ホワイト企業度診断」を受け、87点という高得点を取ったと説明した。
社員の待遇を改善し、離職者は減っているとしている。資料によるとワタミの社員の年間離職率は、業界平均を下回る8.5%になっているという。