渡辺氏は自民党の参院議員だった6年間を振り返り、「政治家としては0点」と言い切った。政界では、「原発ゼロ」などやりたいことをやれなかったという。

 7日に発売された著書「警鐘」では、民間投資を喚起する成長戦略が実現できなかったとして、アベノミクスは失敗したと断言している。

「これからの日本は非常に厳しくなる。国会議員としてできなかったことに基づく事業をやっていきたい。向こう10年、20年のビジョンは創業者じゃないと発想できない」

 新しい事業としては、有機農業や酪農を手がけるテーマパーク「ワタミオーガニックランド」を、東日本大震災の被災地である岩手県陸前高田市に作る。加工品を扱うレストランやショップなどもあり、地方の雇用にも貢献したいという。21年3月に開業する予定だ。

 本業では、直営店が中心だった展開手法をフランチャイズ主体に転換。「から揚げの天才」「しろくまストア」といったブランドで、小規模な店づくりを進める。消費増税や高齢化で市場拡大が期待される宅配事業にも力を入れる。将来的な円安に備えて、ベトナムのほか、中国や米国など海外市場も開拓する。

 10年後の29年3月期には売上高は現在の約2倍の2千億円、営業利益100億円をめざすという。

「この会社があってよかったと思ってもらえるような会社になりたい。これからも社員の幸せを実現することを、一番に考えていきたい」

 会社の成長に自信を見せる渡辺氏だが、ブラック企業を巡る批判は根強く、復帰には疑問の声もある。

「経営に復帰することは1千%ない」とこれまで発言していたことを会見で突っ込まれると、あっさり撤回した。

「言い訳する気はない。事実と異なることは認めて撤回する」

 会見では自信満々だった渡辺氏だが、居酒屋チェーンは多くの利用者によって成り立っている。経営トップへの復帰を、消費者は果たしてどう受け止めるのだろうか。 

(本誌・池田正史)

※週刊朝日オンライン限定記事

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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