森永卓郎・康平の親子対談「日本人とお金の本当の話」

お金

2019/10/02 08:00

康平:今回の報告書は、使われている数字が「平均値」なんです。統計学を勉強した人間から見ると、国民全員に向けた報告書がそれでいいのか疑問です。

 例えば世帯所得。日本全体の平均は約500万円ですが、人数で見てちょうど真ん中にあたる中央値は約400万円で、人数が一番多いのは年間所得が200万円台の人たち。つまり、一部のお金持ちによって引き上げられている平均値は、実態からかけ離れる傾向があるんです。

 報告書は平均値であることや人によって必要な老後資金は違うことを何度も強調していますが、読み手の知識が低く「全員が2千万円足りない」という解釈が広がってしまいました。

卓郎:政府は「死ぬまで働け」路線を前面に打ち出していますが、働く高齢者の処遇もひどいものです。大部分の会社が60歳定年でそれをすぎると再雇用。年収は半分から3分の1に下がったうえに、多くがおもしろくない仕事を強いられています。食うためには働かざるを得ませんが、おもしろくない仕事を75歳、いや死ぬまで続けることが幸せとはとてもいえません。

康平:そこの捉え方には世代ギャップがありますね。そう遠くない未来にロボット・AI社会になり、おもしろくない仕事は人間がやらなくてよくなります。私が高齢者になるころには、そういう仕事は機械に置き換えられてしまう。若い人たちは「置き換えられない仕事」ができるように、テクノロジーにキャッチアップし続けなければなりません。そうでないと、今より悲惨な老後が待っています。

卓郎:それはそうだ。でも、そこで言う置き換えられない仕事とは、とてつもない所得格差が広がる世界です。芸術家やお笑い芸人などクリエーティブな仕事が代表的で、そこではトップ10%の人が8~9割の所得をおさえてしまいます。

──ますます自己防衛が必要になりそうですね。それなのに日本人はお金に無頓着なままです。

康平:江戸時代にできた古典落語に「雛鍔(ひなつば)」という噺(はなし)があります。「お金は不浄なもの」という考え方が上流階級に浸透していたことがわかります。明治時代に武士道を説いた新渡戸稲造も、「武士にとっては志が一番。ゼニの話をする者は卑しい」と言っています。日本では何百年も前から、「お金の話をするのはダメな奴」という文化が続いています。

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