夫婦が死亡しているのが見つかった住宅=9月24日午前10時26分、茨城県境町 (C)朝日新聞社
夫婦が死亡しているのが見つかった住宅=9月24日午前10時26分、茨城県境町 (C)朝日新聞社

 いまだ、多くの謎が残る事件だ。

 23日午前0時40分ごろ、茨城県境町の会社員小林光則さん(48)方から、女性の声で「助けて」と110番通報があった。茨城県警境署員らが駆け付けると、2階の寝室で小林さんと妻のパート従業員・美和さん(50)が死亡しているのが見つかった。2人は首や顔に切られたり刺されたりした複数の傷があり、県警は殺人事件と断定した。

 県警によると、小林さんは一家5人暮らしで、2階の別室で寝ていた中学1年の長男(13)は、両足と腕に切り傷があり重傷。小学6年の次女(11)も両手の痛みを訴える軽傷だ。2人は2段ベッドで寝ており、次女は「スプレーのようなものを(腕に)かけられた」と話しているという。

 現場から凶器やスプレーは見つかっておらず、1階にいた大学3年の長女(21)にけがはなかった。長女は「物音やサイレンの音で気付いた」と話しているという。

 夫婦は寝室の布団の上で光則さんがあおむけ、美和さんが横向きに倒れていた。就寝中に襲われ、美和さんが寝室にあった固定電話の子機から110番したとみられる。

「痛い、痛いと叫びながら110番通報してきている。通報している時に犯人がまだ室内にいた可能性がある」(捜査関係者)

 地元の記者は、「通報があった時、警察官が『救急車を呼びますか』と聞くと、美和さんとみられる相手は『いらないです』と答えたようです」と話す。

 小林さん宅には無施錠の場所が複数あり、室内にも荒らされた形跡はなかった。また、敷地内には家族や通報を受けて駆け付けた捜査員、消防関係者以外の靴の足跡が残っており、タイヤの跡もあったという。

「当初、マスクをつけた人物に襲われたと長男と次女が主張したが、防犯カメラの映像などから、県警ではそうした事実はないと考えている。死亡した夫婦には防御創があり、光則さんの致命傷は肺にまで達する深い刺し傷だった。この家族に強い恨みを持つ者の犯行とみている」(捜査関係者)

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防犯カメラ、ドライブレコーダーの映像を分析