第23回手塚治虫文化賞の短編賞を受賞した小山健さんと、女性の生理を擬人化したキャラクター「生理ちゃん」(撮影/本誌・多田敏男)
第23回手塚治虫文化賞の短編賞を受賞した小山健さんと、女性の生理を擬人化したキャラクター「生理ちゃん」(撮影/本誌・多田敏男)
新生賞の山田参助さん
新生賞の山田参助さん
特別賞のさいとう・たかをさん
特別賞のさいとう・たかをさん
さいとう・たかをさんが受賞記念に描き下ろした「ゴルゴアトム」
さいとう・たかをさんが受賞記念に描き下ろした「ゴルゴアトム」
手塚治虫文化賞のロゴマーク
手塚治虫文化賞のロゴマーク

 マンガ家の手塚治虫氏の業績を記念する第23回手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)の贈呈式が6日、東京・築地の浜離宮朝日ホールであった。4人の“スーパー漫画家”が勢ぞろいした。

【さいとう・たかをさんが受賞記念に描き下ろした「ゴルゴアトム」はこちら】

 マンガ大賞に選ばれたのは、有間しのぶさんの『その女、ジルバ』。40歳、彼氏なし、閑職の主人公・新(あらた)が、愉快な老女たちがもてなすバーで新米ホステスとして働き始める物語。先輩ホステスたちが経験した店の歴史や、ブラジル開拓移民だった伝説の「ジルバママ」の人生に触れながら、主人公は新たな一歩を踏み出していく。

 手塚作品が大好きな有間さんは、贈呈式でこう語った。

「今回はいろんな方に取材をして、特にその方たちが背負ってきた苦しさ、悔しさ、怒り、悲しみみたいなものを、私の力量でさばけるんだろうかというくらい、たくさん受けとめてきました。この苦しさや悲しみを歌(物語)にすることで、喜びに変えられるのではないかという手応えをほんの少し感じたことが、私にとって収穫だったと思います」

 新たな才能に贈られる新生賞は、『あれよ星屑(ほしくず)』の山田参助さん。元陸軍軍曹・川島と、その部下だった黒田を主人公に、敗戦直後の東京に充満する“性“と“生”を表現。初長編ながら、「歴史の光と闇、人間の欲や業を鮮烈に描いた」と評価された。

 和装で登壇した山田さんは、少し照れながら喜んだ。

「敗戦後の日本を描いてみたい、と昔から考えてはいました。(自分の筆が遅くて)後ろで腕組みをした編集者から、『そのページ、ペン入れそこまで!』と指導を受けるなど、最近のマンガ家では聞かないような体験をさせてもらいました」

 短編賞は、小山健さんの『生理ちゃん』。月に一度、時には理不尽とも思えるタイミングで女性に訪れる生理を、ポップに擬人化。ウェブメディアに掲載されて話題になった。

 藤子不二雄Aさんの『まんが道 愛蔵版』で過酷なマンガ制作を知り、「マンガ家になることを小学生の時に諦めた」と話す小山さんに、会場からは笑いが起こった。

「1話目は、玄関から生理が入ってきたら面白いんじゃないかと思い、ギャグマンガとして描きました」

 今秋公開予定で実写映画の制作が進んでいる。擬人化された「生理ちゃん」もお祝いに駆けつけ、小山さんと壇上に上がった。

 特別賞は、さいとう・たかをさんに贈られた。代表作『ゴルゴ13』の連載50年達成と、長年にわたるマンガ文化への貢献が評価された。

 1955年にデビュー。68年11月に連載を開始した『ゴルゴ13』は、一度も休載せずに、いまも連載が続く。

 11歳のときに手塚治虫氏の作品『新寶島』と出会ったことが、マンガ家になるきっかけだったという。現在82歳だが、贈呈式では意気込みを語った。

「自分でもできすぎた人生だとつくづく思っています。どこまで描けるか、とにかく頑張ってやろうという気持ちでいます」

 贈呈式後は、有間さんと選考委員で作家の桜庭一樹さん、手塚氏の長女・るみ子さんの3人によるトークイベントもあった。

 会場では、受賞者のサイン入り作品パネルが展示され、描き下ろしイラストのクリアファイルなどが販売された。(本誌・緒方麦)

※週刊朝日オンライン限定記事