川崎市の登戸駅近くの事件現場(撮影・田中将介)
川崎市の登戸駅近くの事件現場(撮影・田中将介)
池田小学校事件で愛娘を亡くした塚本有紀さん(C)朝日新聞社
池田小学校事件で愛娘を亡くした塚本有紀さん(C)朝日新聞社

「18年前と同じような時期に、こんな事件が起こってショックです。テレビで映された現場の様子、救急車のサイレンの音、警官が走る姿は、あの時と同じ光景に思えてしまった。こんなひどいことをする犯人は許せません」
 

【宅間元死刑囚と岩崎容疑者の共通点を語る塚本有紀さん】

 こう訴えるのは、宅間守元死刑囚が2001年6月8日に起こした大阪教育大付属池田小学校襲撃事件の犠牲者、塚本花菜さん(当時7)の母親の有紀さんだ。

 今回、岩崎隆一容疑者(51)が起こした川崎19人殺傷事件と附属池田小学校事件には共通点が幾つかあるという。朝の登校時間帯に無言で子供が集まる場所を狙って無抵抗の小学生を次々と殺傷したことだ。

「附属池田小学校事件と同じように、被害の多くが小学生の女の子と報じられています。大声で騒ぐなどすれば子供も逃げようがありますが、無言だとどうにもなりません。私の娘も無言で背後から刺されてしまった。似たところが多く、犯人は附属池田小の事件を調べてそれを真似たりしたのかと、つい思ってしまいます。被害者として、これまでも学校の安全性、警備などについては訴えてきたのですが…」

 塚本さんはこう続ける。

「小さな子供は無条件に、大人がいると安心、信用してしまう。そして、学校は安全な場所と思っている。今回、被害にあわれた子供たちは通学のバスを待っていたので、学校の延長で安心していたはず。そんな子供たち
の心理を逆手にとった卑劣な犯行のように思えてならないです」

 岩崎容疑者の中学の同級生もこう話す。

「ニュースで岩崎が犯人だと聞いて、アイツならこういうこともやりかねないと思いました。アイツはああいう子どもや弱い人を狙うんですよ。一見はおとなしいが、些細なことでイライラして、機嫌が悪くなる。しかし、強そうな人や生徒には絶対、手を出さない。ずる賢い。逆に強そうな生徒がいると、反対方向に歩き、逃げて行った時もあった。アイツならではの卑怯な犯行ですよ」

 事件後、塚本さんら被害者たちは、学校の安全性について国などに、警備強化などを強く訴えた。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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