室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
イラスト/小田原ドラゴン
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 作家・室井佑月氏は、丸山穂高議員の“戦争”発言をきっかけに、安倍首相をはじめ、他の政治家が戦争をどうとらえているのか心配になったという。

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 元日本維新の会の丸山穂高衆議院議員の発言。

「戦争しないとどうしようもなくないですか」

 あの発言に、背筋が凍りそうになった。

 お酒を飲んでいたからとか、問題を提起しただけとか、議員にだって言論の自由があるとか、そんな問題じゃないよね。

 さすがに、日本維新の会の代表である松井一郎・大阪市長も、

「国会議員として一線を越えた発言。元島民、国民に本当に不快な思いをさせ、心からおわびを申し上げたい」

 そう即座に反応し、丸山氏を除名処分にした。あの発言が、国会議員として一線を越えているのはもちろんのことである。

 けど、あたしが引っかかるのは、発言しなければそれでいいのか、というところ。

 飲み屋にいるオヤジの戯言じゃないんだよ。丸山氏みたいな考え方の政治家、ほかにも結構いるんじゃないの? あたしが丸山氏の発言で背筋が凍ったのは、そこの部分だ。

 政治家たちが一部の支持者へのサービスで、隣国へのヘイトをくり返したり、拳を振り上げてみせたりすることは多々ある。それってさ、ほんとにほんとのただのパフォーマンス? 丸山氏みたいな考えがちょこっとでもあるからじゃないの? だとしたら、怖い。

 あたしら大勢は、国から便利なATMみたいに扱われている。あたしたち一人ひとりに命や感情があるなんて思われてなく、ざっくりと何人いるからいくらまでなら召し上げられる、と国から判断されてそうな代物だ。

 そういう代物とされているあたしたちは、もし外国と揉めることがあったら、簡単に使い捨てにされるだろう。

 今の政治家たちは、外国とのぎりぎりの交渉の中で、あたしたち庶民の命を何番目くらいに考えてくれるのだろうか?

 権力の座を確保するための選挙にしか関心がなく、権力を得たら破廉恥にもその私物化だ。もはや、あたしたちの代弁者と思えない政治家に、あたしたち多くの国民のことを真っ先に考えてくれよ、といっても詮無いことのような気がしている。

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室井佑月

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室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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