取り壊される空き家。行政によって撤去される家が増える (※写真は本文とは直接関係ありません) (c)朝日新聞社
取り壊される空き家。行政によって撤去される家が増える (※写真は本文とは直接関係ありません) (c)朝日新聞社
空き家率は増加 (週刊朝日2019年5月24日号より)
空き家率は増加 (週刊朝日2019年5月24日号より)

 元号が令和に変わり、新時代に希望や期待を膨らます人も多いだろう。しかし、経済が低迷し地価は暴落するリスクを抱えていることもまた事実だ。

【図表で見る】空き家率の実績値と予測値

 令和の経済はどうなるか。20年の東京五輪、25年の大阪・関西万博といった大イベントが予定され、景気は堅調だとの見方もある。だがいまの低成長から高成長には変わりそうにない。複数のシンクタンクの予測では、経済規模を示す国内総生産(GDP)は、20年代半ばにインドなどに抜かれいまの3位から5位以下に転落する。

 少子高齢化は財政や金融にも深刻な影響を与える。税収よりも支出が大きい財政赤字でもこれまでやってこられたのは、個人の金融資産が豊かだったからだ。政府は赤字を補うため多額の国債を発行しているが、それを買ってくれるのは銀行や保険会社など。その原資は、突き詰めると個人の預金や保険料などになる。高齢者が自分の預金を取り崩して生活費にまわすようになると、国債を買う原資は減る。

 いまは日銀が異次元の金融緩和で国債を買い支えているため超低金利だが、いつまで続くかわからない。日本総合研究所の湯元健治副理事長はこう指摘する。

「日銀は20年代半ばには緩和策からの『出口』を模索し始めるでしょう。現在のように国債を買い支えるのは難しくなります。その結果、国債が売られて金利が急騰し、物価も急上昇するハイパーインフレに陥る恐れがあります。財政は悪化し、再建のため、消費税は欧州諸国並みの20%前後まで引き上げられるでしょう」

 少子高齢化によって不動産の需要も減る。野村総合研究所によると、住宅の建て替えや転用などの対策が進まなかった場合、国内の空き家は33年に1955万戸に達する見通しだ。住宅の3割近くが空き家になり、3軒に1軒が空き家の時代が到来する。

 不動産コンサルタント会社、さくら事務所の長嶋修会長は、都心から30~40キロ圏の「ベッドタウン」で、地価が急速に下落すると予想する。

著者プロフィールを見る
池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

池田正史の記事一覧はこちら
著者プロフィールを見る
吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

吉崎洋夫の記事一覧はこちら
次のページ