「一つには、グーグル、アップル、フェイスブックなどはいずれも20代のチャレンジャーが創業しているのに対して、日本企業の経営者は50代、60代で、しかも失敗が怖いので守りの経営をしている。これでは引き離されるばかりです」

 そして、トヨタ、日立、パナソニックなど、日本を代表する企業のメイン研究所はいずれもカリフォルニアのシリコンバレーにある。

 なぜか、と問うと、日本には人工知能などの優れた研究者は育っていなくて、スタンフォード、ハーバードなどの研究者は日本に来てくれないからだ、というのが答えであった。

 では、なぜ日本に来てくれないのか、と問うと、何と日本の経営者たちがいずれもシャットアウトしているのだというのである。

「人工知能など先端技術は、3回、4回、失敗を繰り返さないと開発できない。シリコンバレーでは、3回、4回、失敗した人間でないと相手にされない。だが、日本の経営者たちは失敗を認めない。だから、せっかくシリコンバレーに研究所をつくっても、日本の本社との間に深い溝ができてしまっているのです」

 もっとも、去年あたりから少なからぬ日本の経営者が、自社の展望のなさに強い危機感を抱き、本体の改革に取り組み始めたようだが、はたして復活できるのか。

週刊朝日  2019年4月12日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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