そんな中、泊さんのように「世のため人のため」を目指す一群の男性たちがいる。しかも、続々70歳代に突入している団塊の世代、あるいはその周辺の世代で目立ってきている。

 北九州市が06年から行っている「生涯現役 夢追塾」は、そんな社会貢献家の「養成所」だ。そもそもが団塊世代がリタイア後に地域貢献に取り組むのを後押しする狙いで始まった。50歳以上が応募資格。1年単位の研修に毎年30人程度が集まってくる。

 指定管理者として運営に当たっているNPO法人代表の関宣昭さん(68)が言う。

「卒塾後の具体的なアウトプットを出していこうと、5年前からガラリとカリキュラムを変えました。前半は地域社会での仲間づくりの手法を学び、後半は実際に地域に出ていって課題を見つけ、グループでその解決法を探っていきます。座学中心を体験重視にしたのです」

 おもしろいのは、地域で一番活躍しているのは「おばちゃん」だから、「おばちゃん」が持っている特徴を知り、できるところはまねていこうとする研修を大真面目に行っていることだ。

「私たちは『おばちゃん力』と呼んでいます。会社勤めをしていると、地域のことを知らないし、地域の人との接し方も知りません。その点、おばちゃんはすごい。井戸端会議で素早く情報交換するなどコミュニケーション能力は抜群で、相手が社長であってもまったく動じずに声をかけていきます。サラリーマンが地域活動家になろうとすると、おばちゃん力を身に付けるのが一番です」

 成果は続々と上がっている。市は卒塾生の活動が取り上げられた新聞記事を集めて「記事集」を作っているが、18年度はすでに30ページにも及んでいる。(本誌・首藤由之)

週刊朝日  2019年3月29日号より抜粋

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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