公式練習では、すべてがうまくいっているように見えた。大会前の会見で「今の状態は100%」と語っていたとおりに、4回転ジャンプを何度も着氷させ、けがの原因となった4回転ループも悪くなかった。

 本番前の最後の練習は12時20分間からの30分間。曲かけ練習中を除いて、この間に跳んだジャンプはコンビネーションをふくめて20回に上った。その様子を最前列でみていた、元五輪選手で現在はエフゲニア・メドべージェワの振り付けも行うミーシャ・ジーさんは、「最高だね」の一言。順調な仕上がりだっただけに、本番でのミスは誰もが「らしくない」と思っただろう。

「(冒頭でミスした)サルコウに関しては、ごちゃごちゃといろんなことを考えすぎてしまったかな、というのが本音です。6分間練習で跳ぶスペースを見つけきれなかった。謙虚になってしまった。自信をもって、王者らしくいないと、と思いました」と語った羽生。

 対するチェンは自信みなぎる様子で、ミスのない完ぺきな演技だった。

 1位のネーサン・チェンとの差は12・53点だが、「フリーで挽回したい」と答えた羽生。圧巻の演技と鳴りやまない拍手の羽生劇場をもう一度見せてほしい。

(本誌取材班)

※週刊朝日オンライン限定記事