前川喜平さん。本連載では読者からの前川さんへの質問や相談を受け付けています。テーマは自由で年齢、性別などは問いません。気軽にご相談ください。
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※写真はイメージです (c)朝日新聞社
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 文部科学省で事務次官を務めた前川喜平氏が、読者からの質問に答える連載「“針路”相談室」。今回は、PTA役員の選出に苦悩している保護者からの相談です。

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Q:小学校の次年度のPTA役員を探すのに四苦八苦しています。最近は、小学生の母親でも働いていない人なんてなかなかいません。役員の仕事は膨大ですが、それを誰かに押し付けるような決め方が続いています。保護者の代表として教職員に意見を申し入れるなどは、誰かがやらなければいけない仕事です。しかし、保護者の自主性に頼りっぱなしで良いのでしょうか。もっと周辺領域の人を増やすべきだと思います。

A:PTAが、親の全員強制参加のようになっている現状は、はっきり言って異常です。同調圧力という日本社会の病理の象徴と言ってもいい。そもそもPTAは、あくまで任意参加。だから役を押し付けられるいわれもなく、断ることだってできます。みんながそうすれば組織そのものが崩壊するかもしれませんが、私はそれで良いと思います。

 今のPTAが抱える問題は大きく分けて二つ。一つは、組織の維持自体が活動の目的になってしまっていること。前例踏襲が第一で、もはや何のためにやっているのかが分からなくなっています。二つ目は、学校がPTAを下部機関や資金源のように扱っていること。「今度の行事に○人出してください」と、無償の労働力として使ったり、「これこれの備品を買ってください」と求めたり。これって明らかにおかしいですよ。

 私は文部科学省時代に「スクールミーティング」という取り組みの中で、ある小学校に出向き、教職員とPTA、学校支援ボランティアの方々から話を聞いたことがあります。PTAの人たちは「なかなか保護者の協力が得られない」などとつらそうだったけれど、ボランティアの人たちはイキイキと楽しそうで、「希望者はいくらでも集まるんです」なんて言ってた。この違いは、「強制か任意か」で決まると思いました。つまり、PTAは組織ありきで、決められた役と仕事に人が当てはめられるのに対して、ボランティアは、できる人ができる範囲で行う「この指止まれ」方式。本来PTAも、やりたい人ができる範囲で行うものですが、そうではなくなっていることが問題。ボランティアを組織化した方がよっぽど良いと思いました。

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前川喜平

前川喜平

1955年、奈良県生まれ。東京大学法学部卒業後、79年、文部省(現・文部科学省)入省。文部大臣秘書官、初等中等教育局財務課長、官房長、初等中等教育局長、文部科学審議官を経て2016年、文部科学事務次官。17年、同省の天下り問題の責任をとって退官。現在は、自主夜間中学のスタッフとして活動する傍ら、執筆活動などを行う。

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