腰部脊柱管狭窄症の原因となる腰椎すべり症は変性すべり症のほうが多く、加齢などによって腰の骨を支える力が弱くなって起こる。腰の骨の分離はないものの、椎間板が加齢とともに変性して骨全体の位置がずれてしまうのだ。

 日本脊椎脊髄病学会理事長で大阪市立大学病院整形外科主任教授の中村博亮医師はこう話す。

「病院によっては、腰部脊柱管狭窄症という病名ではなく『すべり症です』と診断されることもあり、一般の方にはやや難しいかもしれません。神経圧迫がなければ腰部脊柱管狭窄症ではなく、変性すべり症を原因として神経圧迫の症状が出ていれば、腰部脊柱管狭窄症のなかに腰椎すべり症が含められます」

■圧迫箇所により3タイプがある

 腰から下の脊柱管には、馬尾という神経の束が入っていて、さらに馬尾は左右の足へ細く枝分かれした神経根という神経を伸ばしている。腰部脊柱管狭窄症は、神経が圧迫される箇所によって、馬尾が圧迫されている「馬尾型」、神経根が圧迫されている「神経根型」、両者が混在した「混合型」の三つに分類される。

 馬尾型では、お尻から太もも・ふくらはぎの外側や後ろ側にしびれを感じる。尿が出づらいなどの排尿障害やしびれを主症状とする間欠性跛行などもこのタイプだ。神経根型では、上半身を反らせたときの腰痛に加え、腰から足にかけて痛みが起こる。左右のどちらかの症状が優位になることが多いのも神経根型の特徴だ。神経根型のほうが、保存療法で改善する人が多い。もっとも多いのは、混合型だ。

 どれほどの症状になったら、受診すればいいのだろう。中村医師はこう話す。

「腰部脊柱管狭窄症は自然に治癒することが少なく、速度に個人差はあるものの進行することが多い病気です。傷んだ神経を取り換えることはできません。常時しびれが出るようになると、完全に治すことは難しくなります。症状が2~3カ月続いたら受診しましょう。歩行障害や排尿障害で日常生活に支障が出ている場合や、家族や知人から『最近姿勢が悪くなってきた』などと指摘された場合は、進行している可能性が高く、要注意です」

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まずは保存療法