大阪市立大学病院整形外科主任教授・中村博亮医師(本人提供)
大阪市立大学病院整形外科主任教授・中村博亮医師(本人提供)

 腰部脊柱管狭窄症は高齢者によく発症する病気。加齢にともない骨や軟骨組織が変性する人は多く、患者数は増加している。比較的若年層に発症する腰椎椎間板ヘルニアよりも患者数は多い。治療ではまず保存療法が実施される。

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 背骨の間で太さ15ミリほどの長い管のような構造になっているところを脊柱管といい、脳からの太い神経と血管がここを背骨に沿って通っている。何らかの原因により腰の部分の脊柱管が狭くなって神経や神経の周囲の血行が圧迫され、痛みやしびれなどを生じる病気を腰部脊柱管狭窄症という。狭窄とは管が狭くなることで、腰の部分の脊柱管がすぼまって狭くなる病態がそのまま病名になっている。

 症状は、腰痛、お尻や太ももの痛み、下半身のしびれ。安静にしているときにはしびれはないのに歩くとしびれや痛みなどで歩けなくなり、少し休息するとそれがおさまる間欠性跛行も大きな特徴だ。前傾の姿勢をとると軽減する。進行すると、足の付け根から陰部にかけての知覚障害やほてり感、下半身の筋力低下、尿が出づらい、尿もれといった排尿障害が出ることもある。

 主な原因には、「変形性脊椎症」と「腰椎すべり症」の二つがある。変形性脊椎症とは、次のような病態だ。腰の骨を含む背骨は、骨と骨の間にゼリー状の髄核とコラーゲンを含む線維輪でできた椎間板がある。加齢や重労働などによってその椎間板がすり減りつぶれると、腰が不安定になる。すると椎間にかかる負荷が大きくなり、防御反応として新たな骨(骨棘)ができたり、黄色靱帯が分厚くなってたるみ、神経を圧迫することで症状が起きる。生まれつき脊柱管が細く、神経が圧迫されやすい人もいる。

 腰椎すべり症は、腰の骨がずれることによって脊柱管が狭くなり神経が圧迫されるもので、閉経後の中高年女性に多い「変性すべり症」と、子どものときに腰の骨の一部分が骨折することにより発生する「分離すべり症」の2種類がある。

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腰の骨を支える力が弱くなる