■症状に適した薬物を選択する

 治療では、まず保存療法が実施される。症状が重いものでなく、日常生活での支障があまりない場合はまず薬物療法をおこなうのが一般的だ。

 薬物療法では、痛みや神経の炎症を抑える非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、神経周囲の末梢の血管を広げて足のしびれなどを改善するプロスタグランジンE1製剤、末梢神経の障害による痛みをやわらげる神経性疼痛緩和薬のプレガバリン(商品名リリカ)、強い鎮痛効果があるアセトアミノフェン配合のオピオイド鎮痛薬(商品名トラムセット)などを使う。

「腰部脊柱管狭窄症では、神経の圧迫だけではなく神経の周囲の血流障害も出ますので、血管を広げる血流改善剤をはじめに試すのが一般的です。間欠性跛行によく効くといわれています」(中村医師)

 神経やその周囲に局所麻酔薬やステロイド薬を注射し、神経の働きを遮断する神経ブロック療法をする場合もある。とくに下半身の強い痛みに効果的だ。神経ブロック療法には、筋肉に局所麻酔薬や鎮痛薬などを直接注射するトリガーポイント注射、神経の束を包んでいる硬膜の外側の空間に注射する硬膜外ブロック療法などがある。硬膜外ブロック療法は、より神経に近い部分へのアプローチができる。

 また、腰を装具で固定するコルセット療法をおこなったり、腰部を安静にしたり、リハビリテーションを実施する場合もある。

「最近では運動療法の必要性も注目されています。加齢によって筋量と筋力が衰えるサルコペニアを合併していることが多いからです。患者さんにスクワットや背筋、腹筋などの運動をすすめることが多くなっています」(同)

 こうした保存療法で症状が改善して日常生活に支障がなくなれば、治療を卒業できる人もいる。少し症状が残っても一定以下のレベルになれば生活に支障がなくなることも多い。

 保存療法を3カ月ほど実施しても症状が進行する場合や、麻痺、排尿障害、筋力低下などが出ている場合には手術が検討されている。

◯大阪市立大学病院整形外科主任教授
中村博亮医師

(文/小久保よしの)

※週刊朝日2月1日号から