「LINE ID」は友達を追加するための識別記号。便利だがIDが流出すると、知らない人から勧誘のメッセージなどが送られてくる恐れも。IDなしでもLINEは使えるので、初心者は登録しないほうが賢明だ(IDは設定の「プロフィール」画面にある)。

 友だちになるには、LINEのQRコードを表示してもらい、スマホで読み取ればいい。この方法だと直接会う人としかつながれないように思えるが、メールなどでQRコードを送れば、離れている人とも友だちになれる。

 LINEが普通のメールやショートメッセージと違うのは、相手がメッセージを読んだら、「既読」の表示がされるところだ。メッセージの代わりに「スタンプ」を押す機能もある。

「スタンプは無料と有料(200円前後)のものがあって、無料は企業のコマーシャルなどを兼ねているので条件があります。シニアも可愛いスタンプを友人同士で共有して、結構楽しんでいます」(同)

 無料通話もできるので、スマホの“かけ放題”をやめた人もいるという。

 LINEやフェイスブックなどのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)は、シニアを精神面で支える手段としても期待されている。

 シニアの社会参加について研究する東京都健康長寿医療センター研究所の桜井良太研究員は、「若い人を対象にした海外の研究ですが、SNSで自己主張できる人ほど精神的健康度が高いことがわかっています」と話す。

 同研究所の野中久美子研究員は、地域の社会活動にSNSを使うことを模索している。その中で、興味深い発見をした。

「シニアは顔の見える関係にある人とSNSでつながるように見受けられます」

 研究の一環として東京都や川崎市などで多世代カフェを開いたところ、こんな光景が見られた。育児中の母親がシニアに育児などの相談をする一方で、シニアは母親にスマホの使い方を教わっていたのだ。

「こうしたことを機に地域の人たちがSNSでつながることができれば、シニアが買い物をお願いしたり、反対に若い人の相談にのってあげたりと、助け合うことができるのではないでしょうか」(野中さん)

 誰かにスマホの使い方を教えてもらいたいけれど、忙しい家族には聞きにくい。多世代カフェのように若い世代と知り合うきっかけがない場合は、シニア向けのスマホ教室に通うのも手だ。前出の三好さんはこう呼びかける。

「同じことを何回繰り返し質問しても、インストラクターが丁寧に教えてくれます。同じ悩みを持つ人が一緒に学んでいることも、安心感につながります」

 83歳のデジタルクリエーター、若宮正子さんは、LINEなどのトラブル防止策として、不安や疑問があったらボタンやリンク先を押さず、“スクリーンショット”で画面を残すことを勧める。

「あとで詳しい人にその画面を見せれば、安全かどうか確かめることができます。スクリーンショットのやり方は機種によって違うので、聞いておきましょう」

 製薬会社のバイエル薬品が約1600人の65歳以上に実施したネット調査では、「豊かな生活ができるお金があること」「自分らしく仕事やボランティアをすること」よりも、「家族や周囲の人と精神的なつながりが実感できること」「家族や周囲の人と話すこと」を重視するシニアが多かった。

 病気やケガなどで外出ができないときにLINEでメッセージをやりとりすれば、不安や心細さが解消できる。介護が必要になったら、家族やケアマネジャーらと連絡を取り合うツールにもなる。いま操作方法を覚えておけば、将来さまざまな困りごとを解決できる手段になるかもしれない。

 やっぱり、LINEぐらい始めておこう。(本誌・山内リカ)

※週刊朝日2018年12月7日号