江川紹子(えがわ・しょうこ)/ジャーナリスト。1958年、東京都生まれ。神奈川新聞記者を経て、フリーのジャーナリストに。オウム問題や冤罪事件、災害など、国内外のさまざまな問題に取り組む。95年、一連のオウム報道で菊池寛賞を受賞。大のオペラ・クラシック愛好家としても知られる。著書に『特捜検察は必要か』(岩波書店、編著)など多数。自身のツイッター(@amneris84)やヤフーニュース「江川紹子のあれやこれや」で旺盛な論評も展開している。(撮影/大野洋介・写真部)
江川紹子(えがわ・しょうこ)/ジャーナリスト。1958年、東京都生まれ。神奈川新聞記者を経て、フリーのジャーナリストに。オウム問題や冤罪事件、災害など、国内外のさまざまな問題に取り組む。95年、一連のオウム報道で菊池寛賞を受賞。大のオペラ・クラシック愛好家としても知られる。著書に『特捜検察は必要か』(岩波書店、編著)など多数。自身のツイッター(@amneris84)やヤフーニュース「江川紹子のあれやこれや」で旺盛な論評も展開している。(撮影/大野洋介・写真部)

 長きにわたってオウム真理教の取材を続けてきたジャーナリストの江川紹子さん。事件から何を教訓とすべきなのか、そして江川さんの目に現代社会はどう映るのか、作家の林真理子さんが聞きました。

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林:地下鉄サリン事件から23年ですが、あのころよりも生きづらい感じがしますか。自民党総裁選で、安倍(晋三)さんが3選されましたけど、世の中ちょっと違うほうに行ってるんじゃないか、とか。

江川:そうですね。世の中全体が“カルト化”しているように思うんです。オウムなどのカルトの特徴だと思っていた現象が、今は社会のあちこちで見られるようになった。オウムって本当は、“時代のカナリア”だったのかなと思うことがあります。

林:なるほど。カナリアといえば、有毒ガスに敏感だということで、警察がカナリアが入った鳥かごをさげて、サティアンに入っていきましたよね。オウムというのは、実は時代のカナリアだったんじゃないかと。

江川:たとえば、「正義はわれにあり。それに敵対するものは悪である。悪はたたきのめさなければならない」というふうな、“全否定・全肯定”の傾向が、今あちこちに見られていますよね。

林:はい、それはすごくありますね。

江川:「これが正しい」となったら、違う情報を提供しても耳を貸さないし、心に入らない。とにかく「これだ!」となって、それに合うエビデンスだけしか受け入れない。そういうカルト的な特徴が、オウムほど濃くはないにしても、社会全体に薄く広く見られる感じがするんです。

林:よくわかります。先日の「新潮45」問題(注:8月号でLGBTについて「生産性がない」と否定した自民党の杉田水脈衆院議員の論考を掲載したのに続き、10月号で論考を擁護する特集を組み、批判が噴出した問題。発行元の新潮社は9月25日、同誌の休刊を発表)なんかもそうですよね。杉田さんの発言が批判されると、「あの発言のどこが悪い」と雑誌全体が彼女を応援して、反対意見をたたきましたけど、やるなら賛否両論を載せるべきです。どちらかの意見だけに偏るのは、違うんじゃないかと思います。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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