保釈され警視庁原宿署を出る吉澤ひとみ被告(撮影/秦正理)
保釈され警視庁原宿署を出る吉澤ひとみ被告(撮影/秦正理)
吉澤ひとみ被告はかつて一日警察署長も務めた (c)朝日新聞社
吉澤ひとみ被告はかつて一日警察署長も務めた (c)朝日新聞社

 飲酒ひき逃げ事故を起こした元モーニング娘。の吉澤ひとみ被告が保釈された。事故当時の映像が公になったが、専門家は「当たりどころが悪ければ死者が出る速度だった」と解析。悪質な交通事故を巡っては、被害者や遺族の要望を受け、厳罰化の傾向にある。今後の法廷で、吉澤被告は何を語るのか。

【写真】かつて一日警察署長も務めた吉澤ひとみ被告 笑顔の制服姿

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 自動車運転処罰法違反(過失運転致傷)と道路交通法違反(酒気帯び運転、ひき逃げ)の罪で起訴された吉澤ひとみ被告(33)が9月27日に保釈された。勾留されていた警視庁原宿署には100人以上の報道陣がごった返し、午後5時半過ぎに吉澤被告が姿を現すと無数のフラッシュがたかれた。

 1990年代後半に一世を風靡した国民的アイドル「モーニング娘。」の元メンバーだけに、その事件の衝撃は大きかった。

 吉澤被告は6日午前7時ごろ、東京都中野区の交差点で赤信号を無視して突入。女性をはねるなどし、そのまま現場を離れた。呼気からは基準値の約4倍にあたるアルコールが検出され、自動車運転処罰法違反や道交法違反の疑いで警視庁中野署に逮捕された。

 当初、吉澤被告は現場を離れた理由として「周囲に車が多く停車できなかった」と供述していたとされる。しかし、ひき逃げの瞬間と見られるドライブレコーダーの映像が、写真週刊誌「FRIDAY」のデジタル配信により公開されたことで衝撃はより一層強まった。

 映像には身の毛がよだつ様子が映し出されていた。自転車に乗った女性と男性歩行者が横断歩道を渡り始めた矢先、吉澤被告が運転する白のミニバンがブレーキランプを点灯させながら交差点に突っ込み、女性をはねる。一度は停止したように見えたが、その後すぐ加速して走り去っていくという映像だ。

 ドライブレコーダーの映像解析によって交通事故を鑑定する「ジェネクスト」の保田亜希・映像解析部部長はこう指摘する。

「衝突時には時速45~50キロのスピードが出ていると解析できます。被害に遭われた方が軽傷で済んだのはたまたまで、当たりどころが悪ければ死者が出る速度です。映像にはブレーキを踏んでからの様子しか映し出されていませんが、急ブレーキ音も聞こえます」

 その後、警視庁が吉澤被告の車のドライブレコーダーを解析したところ、事故直前には法定速度を26キロも超過する時速86キロのスピードが出ていたという。

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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事故後に走り去ったことについて、こう指摘