教科書のほかにも副教材や塾の教材、タブレット端末を持ち運ぶ子どももいて、全体的に重量は増している。

■荷物は体重の10%未満に 身体や学習面に悪影響も

 小さな体で重たい荷物を運べば、体への影響は大きい。たかの整形外科(世田谷区)の高野勇人院長は、背など姿勢が悪くなる可能性があるという。

「小中学生が体重の10%以上の荷物を持つと、背中や腰などを痛めるといわれています。大人になって、肩こりなど痛みの原因となる恐れもあります」(高野院長)

 小学6年生の平均体重は男女ともに約39キロ。文科省は荷物の重さについて基準は示していない。労働基準法では腰痛などを防ぐため、16歳未満の女性は8キロの重さまでしか継続的な作業はできないことになっている。

 姿勢が悪くなれば学習にも影響が出る。身体心理学に詳しい桜美林大の鈴木平教授は、姿勢と学習の関係についてこう説明する。

「姿勢が良いと血流が良くなり、脳が活性化し、学習の効率が上がりますが、姿勢が悪いと、知らず知らずに内蔵に負担がかかったり、気分がうつに向かったりすることがわかっています」(鈴木教授)

 置き勉を認めるかどうかは、これまでも形式的には各学校の裁量に任されていた。だが、文科省が長年あいまいな態度を取っていたため、大半の学校は認めていなかった。

 保護者からの批判が高まり、報道も相次いだことで、文科省はやっと重い腰を上げた。それでも置き勉は一律には推奨はしないとして、担当者はこう言う。

「子どもや地域の状況に応じて、各学校で柔軟に対応して欲しい」

 文科省は通知を出したが、各学校に責任を押しつけたようなものだ。

 “丸投げ”された各学校は今後どうするのか。カギのかかるロッカーなどが不十分で、置き勉に対応できないところもある。重いランドセルを背負わされる子どもは、なくなりそうにもない。

(本誌・吉崎洋夫)

※週刊朝日オンライン限定記事

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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