ガンになっても「ガンモドキだよ」 有馬稲子が語る小津安二郎 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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ガンになっても「ガンモドキだよ」 有馬稲子が語る小津安二郎

菊地武顕週刊朝日
「東京暮色」の長女役・原節子(左)と次女役の有馬稲子

「東京暮色」の長女役・原節子(左)と次女役の有馬稲子

「東京暮色」に出た時は、小津さんが偉い方だとは知らなかったんですよ。

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 でも撮影中にすごいものを見ちゃいました。原節子さんが首の向きを横にするシーンがあったんですけど、うまくいかないと言って15回くらい撮り直したんです。

 原さんでもあれだけやられるのだから、私だったらどうなるの、と怖くなって。でも山田五十鈴さんとのケンカのシーンは一発でできましたし、なぜか絞られなかったんです。

 小津さんにはよく食事に誘っていただきました。「ネコちゃん(有馬の愛称)、すき焼き食べよう」と大船でご馳走になったほか、横浜の洋食屋にも2回くらい連れて行ってもらいました。

 私は終戦後、釜山から引き揚げてきたんです。16tの小さな船に乗り、3日かけて下関にたどり着きました。小津さんはその時の苦労について興味を持ち、よく「ネコちゃん、あの話をしてよ」と言われました。

 撮影の現場って、普通なら照明さん、大道具さん、小道具さんの声が響き渡っているでしょう。でも小津組の場合はシーンと静まり返ってるんです。まるで禅の道場(笑)。小津さんが下の位置に据えたカメラを覗きこんで、小道具の位置を全部決めていきます。「コップ、4cm大船」「いや間違えた、3cm鎌倉」って。右とか左とか言わないで、地名で指示するんです。すべて準備ができてから、役者が座るんです。


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