大瀧詠一が『夢で逢えたら』でやりたかったこと (1/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
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大瀧詠一が『夢で逢えたら』でやりたかったこと

連載「知新音故」

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小倉エージ週刊朝日#小倉エージ#知新音故
深夜放送「ザ・パンチ・パンチ・パンチ」のDJ「モコ・ビーバー・オリーブ」の「オリーブ」として人気があったシリア・ポール。『夢で逢えたら』で歌手として再デビューした

深夜放送「ザ・パンチ・パンチ・パンチ」のDJ「モコ・ビーバー・オリーブ」の「オリーブ」として人気があったシリア・ポール。『夢で逢えたら』で歌手として再デビューした

シリア・ポール『夢で逢えたら VOX』

シリア・ポール『夢で逢えたら VOX』

 大瀧詠一主宰のナイアガラ・レーベルが1977年に発表したシリア・ポールのアルバム『夢で逢えたら』。この名作が今年3月、『夢で逢えたら VOX』及び2枚組CDの通常盤として久々に復刻された。

 オリジナル盤が誕生した背景には、米国の音楽プロデューサー、フィル・スペクターの存在があった。大瀧は彼の音楽に傾倒し、スペクター・スタイルのサウンドに憧れていた。中学時代に親しんだガールズ・グループへの愛着とともに、自分自身のポップス体験を反映した作品づくりを目指す。そこで白羽の矢を立てたのが、シリア・ポールだった。

 シリアは、インド人の父と日本人の母の間に生まれ、日本で育ち、子役として映画に出演。学業に専念するため芸能活動を休止。モデルをきっかけに活動を再開し、ラジオの深夜放送『ザ・パンチ・パンチ・パンチ』のパーソナリティーを務め、すでにレコード・デビューもはたしていた。

 そうして作られたオリジナル盤のいくつかの楽曲のサウンドは、81年発表の大瀧の大ヒット・アルバム『A LONG VACATION』(通称“ロンバケ”)の源流になったと大瀧自身が認めている。

 今回の復刻盤に話を戻そう。実は『夢で逢えたら』には複数の音源が存在していた。(1)オリジナル盤完成前に音響ハウスで制作されたマスター(2)オリジナル・マスター(3)87年の初CD化の際の吉田保によるリミックス・マスター――の三つだ。『VOX』、通常盤ともに未発表だった(1)も収録された。

 幕開けは表題曲の「夢で逢えたら」。もともとアン・ルイスへの提供曲として用意されたが起用されず、吉田美奈子の3作目のアルバム『FLAPPER』(76年)に収録された。のちに数々のミュージシャンにカヴァーされ、中でもラッツ&スターのカヴァーはオリコン9位のヒットになった(1996)。

 この曲こそ、大瀧がスペクター・スタイルを実践したものだ。イントロのドラミング、カスタネットをはじめとする演奏やコーラスにはたっぷりとエコーがかけられている。ストリングスの編曲を手がけた山下達郎の手腕も絶妙だ。


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