「山がまるごと一つ消える大崩落が起こった地震として記憶している方も多いと思います。地震で記録された人類史上最大の揺れとしてギネス世界記録に認定されたこの地震は、活断層が『ない』とされた地域で起こりました。もはや日本に原発を建設・運転できる適地は存在しないということを知らしめたのです」

 地震の「講義」は視野を広げて大陸移動説や地球表面を形成するプレートという岩板の動きを解説。ユーラシア・プレートの両端、ほとんど地震が起こらないフランスと韓国で16年にM5超の地震が発生したことも紹介(韓国では今月15日にもM5.4の地震が発生)し、東日本大震災がユーラシア・プレートに及ぼした影響が大きいという。

 本では、原発の致命的な欠陥にも言及している。

 大地震に襲われた原発が緊急停止しても、電気が途絶えて冷却できなくなれば核燃料の崩壊熱のためにメルトダウンの大事故が発生する。停止中の原発も決して安全ではないということは福島第一原発の事故で得た教訓だが、広瀬さんは「多くの人は原発敷地内のプールに保管されている使用済み核燃料の危険性に気づいていない」と言う。

 福島第一原発事故当時、4号機のプールには1535体の使用済み核燃料が保管されていた。この使用済み核燃料に含まれる放射能の量は、福島第一原発事故で放出されたセシウムやヨウ素などを含めたすべての放射能の量(原子力安全・保安院推定値)の27倍に相当する天文学的な量だった。政府が想定した東京都を含む半径250キロ圏内の住民が避難対象となる最悪シナリオは、4号機のプールから放射能が大量に放出されるケースだった。

「使用済み核燃料は原子炉の何十倍もの危険性を持ちながら、何の防護もない“むきだしの原子炉”といえます。原発が運転中か停止中であるかは関係ない。使用済み核燃料を抱えている原発は、すべて大地震の危機にさらされている。これが『日本列島の全原発が危ない!』の意味です」

 全国の原発から出た使用済み核燃料は青森県六ケ所村にある再処理工場に輸送され、全量再処理される計画だったが、ガラス固化に失敗して操業不能に陥っている。3千トンのプールがほぼ満杯になったため、各地の原発で保管せざるをえない状態が続いている。

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