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津田大介「ラスベガス銃撃事件でわかった単純な事実」

連載「ウェブの見方 紙の味方」

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週刊朝日#津田大介

津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)

津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)

銃撃事件を受けて米ラスベガスの市庁舎前で犠牲者のために祈り、歌を歌う人たち(c)朝日新聞社

銃撃事件を受けて米ラスベガスの市庁舎前で犠牲者のために祈り、歌を歌う人たち(c)朝日新聞社

 ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。ラスベガス銃撃事件で出回ったフェイクニュースについて解説する。

【写真】犠牲者のために祈り、歌を歌う人たち

*  *  *
 米ネバダ州ラスベガスで10月1日、少なくとも59人が死亡、500人以上が負傷した銃乱射事件が起きた。これを巡って、ネット上がフェイクニュースの温床になっている。

 米大統領選挙でデマやフェイクニュースの発信源として注目を集めたネット掲示板「4chan」のユーザーたちは、事件直後から犯人捜しを開始。警察が重要参考人として発表した女性のフェイスブックページをヒントに、関係する人物の洗い出しを進め、ギアリー・ダンリー氏を銃撃犯だとした。彼のフェイスブックの書き込みや写真から、重要参考人の女性と婚姻関係にあったことが推測されたというたわいもない理由なのだが、ダンリー氏が犯人に仕立て上げられたのには別の理由もあった。リベラルな思想を持っていたため「素人探偵」たちの標的とされたのだ。

 ダンリー氏はフェイスブックでリベラルな人物や団体に「いいね!」をしていた。それは4chanに集まるオルタナ右翼(既存保守派に対抗する新興右翼)にとって、犯人に仕立て上げるには十分な理由だったようだ。デマ情報を元に「ゲートウェイ・パンディット」をはじめとする複数の保守系ニュースサイトがダンリー氏を犯人だとする記事を掲載し、ツイッターで拡散した。記事では彼がリベラルな団体を支持していたことが強調された。

 しかし、真犯人は別にいた。警察は10月2日午前、銃撃が行われたホテルの部屋で死亡していた64歳のスティーブン・パドック容疑者が犯人だと発表した。

 発表を受けてダンリー氏を犯人だとするフェイクニュースは収まったが、すぐさま「銃撃犯は過激な左翼思想に取りつかれた反トランプ活動家」というフェイクニュースが広がった。

 フェイクニュースを作って政治的に対立する他者を攻撃する行為は、今やネットの“風物詩”となっている。問題は、今年に入ってフェイクニュースの対策を講じてきたはずのフェイスブックやグーグルが、拡散を抑止できなかったどころか、拡散に貢献したことだ。フェイスブックは銃乱射事件の発生を受けて、家族や友人の安否確認に利用される「セイフティー・チェック」という機能を提供したが、そのページに保守系ニュースサイトのフェイクニュースが掲載されていた。グーグルは、ダンリー氏のフルネームで検索すると検索結果の最上位に表示される「トップストーリー」に、デマの出所である4chanのスレッドを表示していた。

 情報はどちらも数時間で削除されたものの、情報を拡散した両社に非難が殺到。両社はそれぞれ「再発を防ぐため問題の修正に取り組む」というコメントを発表した。

 今回の一件は技術でフェイクニュースを抑え込むことには限界があるという単純な事実を示している。悪意をもってフェイクニュースを流すユーザーに何らかのペナルティーが与えられない限り、この状況は変わらないだろう。

週刊朝日 2017年10月20日号


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