松本:そのときに、「普段が100だとしたら、40%くらいまで光削ってくれない?」と言われて。もう、半分以下じゃないですか。「それって僕なのかな?」と思いましたが、それもおもしろかったですね。

行定:目の力ね。世間の人がイメージする松本潤は、バーンと120%の輝きを持っている。それをブラインドを下ろしてほしいと言いました。眼鏡をかけることも含めて。

──葉山の眼鏡は作中でも効果的な使われ方をしていましたが、どなたのセレクトですか?

行定:何十本という中から、僕が選びました。松本君、真面目なんですよ。40%と言われたら、ちゃんと40%にするんです。

松本:言葉をそのままとると、「目を細めればいいのか?」という話になりますが、そんなことしたら、たぶん怒られますよね(笑)。単純な目の動きのことではないだろうと。普段の自分から40まで落としていったとき、人はどう変わっていくのか、それが僕の葉山という役へのアプローチ方法でした。見える景色が変わるから、感情が変わるんですよね。だからしゃべり方も、動き方も、スピード感も、すべてが変わっていきました。

行定:葉山って輪郭がぼけているというか、曖昧な感じというか。そのぼかし方ってある種の技術でもあるんだけど、どこかで自分のアイデンティティーに触れざるを得ない。この作品はストーリーの大部分を泉と葉山、そして坂口健太郎君が演じる小野の3人で進めていくわけですが、優しすぎるがために人生を逸脱させる葉山は、小野とは好対照なわけです。葉山と泉に対する嫉妬のあまり少しずつ歪んでいく小野の姿を、すごくいい塩梅(あんばい)に坂口君が表現してくれた。僕は「葉山も小野も、どっちもわかる」という気持ちでした。

松本:試行錯誤しながらそぎ落としていく作業は、楽しかったです。「40%」という監督の言葉は、役を作っていくうえで指標となりました。実は別の作品でも、「ちょっと印象が強い」と言われたことがあったんです。

行定:「99.9」(2016年4~6月放送の連続ドラマ)ね。

松本:そうです。あれはちょっと飄々とした弁護士の役だったので、もっと抜いたほうがいいと。指摘されて初めて、自分は比較的正面からものを見つめることが多いんだなということに気づいたんです。(構成/野村美絵[本誌])

週刊朝日 2017年10月13日号より抜粋