肩と腕に激痛…春風亭一之輔が壮絶バトルを繰り広げた相手は?
連載「ああ、それ私よく知ってます。」
落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は、「老化現象」。
* * *
布団に入るも、なかなか眠れず、ようやく寝ついた夜中の1時。家内が「なんか変な音がしない?」と不安そうに話し掛けてきた。眠いのになー……音?そう言われてみるとするかも。「耳、遠くなったんじゃないの? ブンブン音がする!」。あー、ホントだ。ブビビ、ブビビと羽音のようなものが聞こえる。「ゴキブリかな?」「やだーっ!!(泣)」。家内が叫ぶ。泣くような年か?と言いたかったが、のみ込む。「よし! 捕まえてやる!」。急に立ち上がろうとしたら、よろけた。柱につかまって、明かりをつける。眩しい!
「ブビビビビビーっ!!」。羽ばたきながら蛍光灯にぶつかり稽古を繰り返す虫が一匹。
「ゴキブリじゃないよ。ホラ……あれ? なんつーんだっけ? ホラ、メスカブトちっちゃくしたような……」。名前が出てこない。「ひょっとして……カナブン?」「そう、カナブンだ!」「なんですぐ出てこないのよ……早く捕まえて!」
おうともよっ!! 蛍光灯の周りを飛び続けるカナブン。下からアッパーカットを右、左、右と繰り出し続ける私。それを嘲笑うようにかわすカナブン。ものの3分で息が上がる私。動体視力が追いつかない。というか、私に動体視力はあるのか?
そのうちにカナブンの姿が見えなくなり、羽音も聞こえなくなった。「はぁはぁ……このへんで……勘弁……しといたろ」「背中!背中にとまってる!」「えー!? とって!」「やだやだやだ! ムリムリ! 右肩!」
右を振り返ると、肩越しにカナブンが顔をのぞいた。こやつ、神妙にしろ! 左手を伸ばすと、あばよ!とばかりにまたブビビ。瞬間、左腕と肩に電流を流したような激痛が走る。

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