外資系証券会社でも長年市場を見てきた智剣・Oskarグループの大川智宏氏は「招致決定時点に比べて株価が比較的割安」だとして、道路関連会社や、セメントなどの建設資材関連会社に注目する。

 道路は開催に合わせて整備や補修が進む見通しだ。7月24日の開会式で始まる大会は、とりわけ夏場の暑さ対策が必要になる。都市部の気温が周囲よりも高くなる「ヒートアイランド現象」が、人気種目のマラソンや競歩に悪影響を与えるためだ。赤外線を反射する素材を表面にコーティングして路面温度の上昇を抑える遮熱性舗装や、アスファルトのすき間に水分をためて気化熱で温度上昇を抑える保水性舗装の導入が期待される。こうした特殊な技術を持つNIPPOなどの受注チャンスが増えそうだ。

 小池百合子東京都知事肝いりの「電柱地中化」政策では、首都圏の電気工事に強い関電工の仕事が増えそうだ。東京電力への依存度も低下し、工事の受注に向けた営業が積極化しつつあるという。

 五輪関連施設の建設工事や開催時に、警備員の配備を求められる警備会社にも追い風が吹く。五輪需要以外にも、在宅での介護や見守りなどの分野でニーズは広がっており、「五輪が開催されるかどうかにかかわらず、長い目で見て成長が期待できる」(大川氏)という。セコムは個人住宅向けセキュリティー事業で国内シェアトップ。ALSOKは、一般住宅に有料で宿泊させる民泊施設のオーナーや管理者向けサービスを手がけている。

 情報通信(IT)に強い企業も投資妙味がありそう。開催時にはチケットの管理や会場の運営、テロ対策などで大量のデータを扱うため、あらゆる面でITが必要とされる。ディー・ディー・エスは指紋や顔などの生体認証技術がある。サイバーセキュリティーの強化も課題で、ラックはウイルスに備えたソフトを開発している。IT関連の市場は拡大が見込めるため、警備会社と同じように、長期的な視点から仕込んでおいてよいかもしれない。

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