会見する小野寺五典防衛相。右は河野克俊統幕長=29日午前8時1分、防衛省(撮影/北村玲奈)(C)朝日新聞社
会見する小野寺五典防衛相。右は河野克俊統幕長=29日午前8時1分、防衛省(撮影/北村玲奈)(C)朝日新聞社

 北朝鮮が日本へ向けてまた、ミサイルを撃った。政府は8月29日午前5時58分頃、北朝鮮の西岸から北東に向けてミサイル1発が発射され、6時6分頃に北海道の上空を通過、6時12分に襟裳岬の東方約1180キロの太平洋上に落下したと発表した。北朝鮮のミサイル攻撃を防御する手立てはあるのか?

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 北朝鮮が発射した弾道ミサイルは昨年24発、今年もすでに10数発。7月には米本土の一部に到達するとみられる新型の弾道ミサイル発射を2度成功させている。それと並行して2006年から5度にわたり地下核実験を重ね、核弾頭の小型化をめざしてきた。防衛省で北朝鮮情勢を担当する幹部も「着実な前進を踏まえれば、ゴールはそう遠くないとみたほうがいい」と話す。

 北朝鮮の「労働新聞」が公表した発射計画によると、同時発射した4発は「日本の島根県、広島県、高知県の上空を通過し、3356・7キロの距離を1065秒間飛行したあと、グアムの周辺30~40キロの海上に落ちる」という。移動式の車両にミサイルを載せた兵器としてのミサイル発射について、ここまで具体的に事前予告するのは異様だ。

 北朝鮮の目標が核ミサイルの完成にある以上、グアム周辺への弾道ミサイル発射実験は遅かれ早かれ実施されると見るべきだろう。

 グアム周辺へのミサイル発射が強行されれば、北朝鮮のミサイル関連施設や核開発施設などに限定空爆をかける作戦も、トランプ政権の持つ数あるオプションに含まれているはずだ。

 グアムに向けてミサイルが発射された場合の日本の対応について、小野寺防衛相は前出の委員会で、「我が国への存立危機事態になって、(武力行使の)新3要件に合致すれば対応できる」と答弁した。この答弁を聞いた瞬間、大勢の防衛省・自衛隊の幹部たちがのけぞったという。

 日本が保有する現在の弾道ミサイル防衛システム(BMD)では、グアムを狙う弾道ミサイルの迎撃は「例外を除いては不可能」というのが常識だからだ。

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