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ミッツ・マングローブ「カラダを張って全米を癒やすマライア・キャリーの偉大さ」

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ミッツ・マングローブ週刊朝日#ミッツ・マングローブ

何故に全米はこんなにもマライアが好きなのか(※写真はイメージ)

何故に全米はこんなにもマライアが好きなのか(※写真はイメージ)

 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「マライア・キャリー」を取り上げる。

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『世界のおマラ』ことマライア・キャリーの体重が、ついに100キロ超えをしたという衝撃的かつ大変おめでたい話題が駆け抜けました。近年は、その太り具合と口パクのバレ具合で存在感を示すことが生業となっているマライアですが、かつてマイケルとともに整形医療が発展したように、マライアなしでは今の写真修整技術はなかったでしょう。巷のインスタ女たちは、もっとマライアに感謝と敬意を持つべきです。

 それにしても、何故に全米はこんなにもマライアが好きなのか。今年でデビューして27年。オリンピックや大統領選と同様、一定周期で必ず訪れる『おマラ・ブーム』。どんなに太ろうと、どんなに口パクがズレようと、全米はマライアを『最終的に』受け入れるのです。理由はただひとつ。彼女は至って『健全』だからではないでしょうか? アメリカ人的健全さとは、『人種や貧困のコンプレックスを打破し、極めてポジティブなマインドで、決して容姿端麗ではなく、クスリやお酒にも溺れていない』こと。中でも、ドラッグとアルコールで失敗していないのは大きいと思われます。どんなにセンスが悪かろうと、性に奔放で、慇懃無礼な態度を取ろうと、それは『叩き上げで這い上がり、掴み取ったアメリカンドリームの証』であり、さらに巨万の富を手にしながらも『巨大化に歯止めがかからない』という現実も、むしろ親近感や好感に繋がる愛すべきツッコミどころ。マライアは全米のコレステローラーにとっての癒やしであり慰めであるのです。

 そして何よりもの強みは、彼女の存在が極めて『白人』であることに尽きるでしょう。60年代以降、アレサ・フランクリン、ダイアナ・ロス、スティービー・ワンダー、ティナ・ターナー、マイケル・ジャクソン、ホイットニー・ヒューストンといったアフリカ系歌手らの台頭により、アメリカのチャートミュージックの様相は大きく変わりました。如何ようにも敵わない音楽的ポテンシャルの差に、白人系の焦りが色濃くなり始めたところに、1990年マライアは、7オクターブの驚異的ボーカル力を持って、きら星の如く登場しました。デビュー当時はよく『白いホイットニー』という、北海道のお土産みたいな呼ばれ方をしていたものです。黒人系の血を引きつつも、『白人カテゴライズ』できるルックスだという事実は、いまだ人種の壁が厚い(白人至上主義的な)アメリカにとって、非常に好都合な存在であったことに違いありません。黒人リスペクトをしながらも、その功績は『白人の手柄』として扱える。故にマライアは、いつも『最終的に』歓迎されるのです。変な話、彼女の肌の色が、もう1トーン濃かったら、こうはならなかったと思います。恋愛遍歴と自己管理能力の低さ以外にダーティなイメージがないマライアは、いわば白人にとっても黒人にとっても誇らしい上に、都合の悪い時はどちらともなく『向こう側』の責任にできるという貴重なアイドルなのかもしれません。

 そんな全米にとって『健全と親和のシンボル』マライア。時代を象るアイドルとは、得てしてあらゆる理想、そして共感と安心感の平均値とも言えます。日本のそれもかなり様変わりしたなぁと、マツコさんや渡辺直美ちゃんをCMで観るたびに噛み締めている今日この頃です。

週刊朝日  2017年8月18-25号


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