エアコンに押されて、影の薄かった扇風機。ここまで脚光を浴び、多彩な製品が発売されるようになったのは、2011年の東日本大震災がきっかけだ。

 日本電機工業会によると、出荷台数は震災後初の夏となった11年度、前年から約1.6倍の257万台と大きく伸びた。12年度も276万台に伸び、その後も売れ行きは安定している。

 扇風機復権の動きを持続させようと、メーカー各社は新商品開発に力を入れる。節電効果の高いDC(直流)モーター搭載の商品が増えたのも震災後だ。

 DCの製品は、きめ細かい風量調整もできる。やさしい微風からサーキュレーター機能に適した強風まで、機種によっては約30段階にも変えられる。羽根の枚数を増やしたり、チョウの羽や鳥の翼を参考に形状をデザインしたり、各社はアイデアを競い合う。

 長年使われてきたAC(交流)の扇風機が2千~5千円前後なのに対し、DCは1万~2万円前後が中心価格帯。ビックカメラなんば店では、販売台数でみるとAC搭載機が多いが、金額ベースではDCがACに迫る勢いという。

 今年のエアコンのトレンドはどうか。

 前出の島崎さんによると、部屋にいる一人ひとりの体温をセンサーなどで感知し、きめ細かく冷風を送る吹き分けタイプと、部屋全体に冷たい空気を行き渡らせて、快適な空間を作り出す気流重視タイプの2種類に大別されるという。

 リビング用(10畳)で、フィルターの掃除機能がついた商品のうち、売れ筋1位はパナソニック「Xシリーズ」。吹き分けと気流重視の両方の良さを採り入れたハイブリッド型だ。ダブル温度熱交換器を搭載し、例えば、部屋全体はマイルドな冷風、暑いと感じる人には冷たい風、といった具合に別の風を同時に送れる。

 2位の日立コンシューマ・マーケティングの「Xシリーズ」は、部屋にいる一人ひとりを識別して在室時間を特定するカメラを搭載している。それぞれの体感温度の変化を予測することで、風の吹き出しの方向や気流の温度を制御する。

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