放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「裸芸・アキラ100%」をテーマに送る。

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 裸芸・アキラ100%が話題になっている。お盆一つで股間を隠し、お盆をあっという間のスピードで回して笑わせる。あ、先ほど「裸芸」と言ったが、失礼「お盆芸」です。

 あのアキラ100%の芸が卑猥だとか、下品だとか、まあ、いろんなクレームを言う人もいて、そのクレームを真剣に取り上げようとしている大人たちまで出てきている。

 この状況に対して、いろんな芸人さんたちが、あれは立派な芸だとか、品があると擁護している。その擁護に対しても「アキラ100%を、芸人さんみんなが擁護するのがなんか気持ち悪い」なんて意見を見た。それを見た上で言うが、おもしろければいいじゃないか。いや、笑ってる人が多いならばいいじゃないかと思う。

 人それぞれ趣味嗜好、生理があるのだから好き嫌いがあるのもわかるが、仮に10点満点で9対1の「1」を取り沙汰してしまう今の風潮はいかがなものかと思う。5対5で半分、苦手な人がいるならばわかる。

 乗った電車で延々と流れている映像だったらその苦情もわかるが、テレビだから。リモコン一個で簡単にチャンネルを回せばいいじゃないかと思う。当たり前すぎる意見だが。

 
 我ら1970年代生まれ、団ジュニ世代が中学生・高校生の頃はテレビが一番良かった頃。でもどんな文化にも人と同じで進化と成長がある。今のテレビは不自由だとか、そのような文句だけを表立って言うつもりもない。ただ、団ジュニ世代が夢中になっていた頃のテレビは刺激的でキラキラしていた。

 だって、テレビでとんねるずが人を殴っていたのだから。ただ、「人を殴った」と書くとよくない。僕の記憶が確かならば、「夕やけニャンニャン」という番組内で必ず乱闘になるコーナーがあった。必ず乱闘になるだけですごいんだけど、ある回は会場にいた客がとんねるずに仕掛けたのだ(多分蹴った)。今だったら見過ごす。だけど、とんねるずはその素人を捕まえて、お仕置きした。ゲンコツした気がする。CM明け、明らかに反省している素人の顔。いや泣いていた。今だったら、とんねるずが100%悪いとなっているだろう。見ていた僕らはどうだったか? 調子に乗った若い奴らをやっつけるとんねるずを激しく応援していた。テレビを見ながら心臓がドキドキしていた。

 今、あんなことをテレビでやってほしいとは思わない。無理だし。あの頃のドキドキをテレビでもう一度!なんてことも思わない。時代が違う。だけどあの頃、あの時代のテレビでドキドキしてた人が大人になり、子を授かり、家族でテレビを見ていた時に、アキラ100%が出てきたら、笑ってほしい。もし笑いのセンスに合わないのなら、それはそれでいい。キラキラした時代にテレビを見て育った人たちが、今の文化を狭くするようなことだけはしないでほしいし、我ら団ジュニ世代にはそんな人はいないと思っている。アキラ100%が今年、あの格好で大晦日の紅白歌合戦に出るかどうか? もし出たら。それはあの頃のテレビへの期待感を少しだけ思い出させてくれるかもしれない。

週刊朝日  2017年6月23日号

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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