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新学習指導要領に異議あり 中学生、自衛官にとって“有害”でしかない銃剣道

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週刊朝日

「銃剣道」の試合 (c)朝日新聞社

「銃剣道」の試合 (c)朝日新聞社

 中学校の新学習指導要領で保健体育の「武道」に新たに「銃剣道」の名前が加えられた。木銃を使い、相手を突く国体競技で競技人口は3万人以上とされるが、その約9割が自衛官だ。時代錯誤感のある「銃剣道」は今、必要なのか? 軍事ジャーナリストの清谷信一氏が異議を唱える。

 一部で銃剣道が今年新たに加えられたかのような報道があったが、既に2012年から実施の指導要領の「その他の武道」の中に含まれていた。

 今回は自民党の佐藤正久参議院議員らの働きかけによって、「銃剣道」の名前が指導要領に明記された。

 スポーツ庁によると、その理由は「国体の競技種目である、伝統武道である、競技人口、自衛隊で行われている、既に中学での実績があるなど」(担当者)ということだ。

 だが中学の保健体育で銃剣道を教える必要性や根拠には大きな疑問がある。

 競技人口3万人の内、約9割が自衛官である。つまり市井の競技人口は3千人程度で、全国の中学で教えようにも人材がいない。

 事実、文部科学省によると銃剣道を授業で実施している公立中学は全国で1校しかないという。

 これを中学で教育している「実績」がある、と主張するのは無理がある。

 更に銃剣道は基本的に左胸(心臓)・喉を突いて勝敗を競うが、これを中学生にやらせるのは危険である。

 中学の剣道では部活動でも突きは禁じられている。実際に先述の唯一銃剣道を行っている公立中学校でも相手を突かずに型のみを教えている。つまり、中学で導入するなら本来の銃剣道とは似て非なるものにならざるを得ないだろう。それとも突きをそのままにして導入するのか。

 また日本の伝統文化云々というのも疑問だ。小銃に着剣する銃剣は17世紀にフランスのバイヨンヌ地方で作られた。フランス語のbaïonnette、英語のbayonetからもそれが分かる。銃剣はフランスで生まれ、銃剣術も欧州で発達した。つまりは欧州が由来である。

 佐藤議員はブログで《(銃剣道は)自衛隊ではその入隊時、陸上自衛官や航空自衛官のほとんどが習い、部隊等に配置されてからもそのレベルアップに汗を流している武道です。武道とは「武士道の伝統に由来する日本で体系化された武技の修練による心技一如の運動文化……」》などと記しているが、いささか無理があろう。

 自衛隊では銃剣道の弊害の方が遙かに深刻だ。


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