小池百合子東京都知事 (c)朝日新聞社
小池百合子東京都知事 (c)朝日新聞社

 東京五輪の経費は、いまだに天井が定まらない。「おもてなし」で勝ち取った大会準備は今「もったいない」の世論に押され、小池百合子都知事主導の「やりなおし」の真っ最中だが……。いったい着地点はどこなのか。

「文化の日」の11月3日、東京・虎ノ門の大会組織委員会には海外メディアを含め、数十人の報道陣が押し寄せた。

 東京都、政府、IOCの実務者との3日間にわたった「4者協議」作業部会の最終日。IOCのクリストフ・デュビ五輪統括部長は、10分という制限付きの囲み取材で、

「前向きで活発な議論だった」

 と、よそ行きの笑顔で応じた。しかし、出席した関係者は、内情をこう明かす。

「IOCは内心、不機嫌ですよ。東京の信頼も揺らいでいる」

 4者協議は、IOCのトーマス・バッハ会長が10月18日に会談した東京都の小池百合子知事に申し入れて実現した。

「都民に負の遺産を残すわけにはいかない」と訴える小池知事のブレーン、都政改革本部の調査チームが9月、いずれも新設するボート・カヌー、バレーボール、水泳の3会場の建設中止を含めた見直しを提言。その再検討が、4者協議の一つのテーマだった。

 既存施設活用、コスト削減など、会場見直しにはこれまで理解を示してきたIOCだが、この期に及んでの見直しは、わけが違う。

 開催決定から3年近くかけ、国内外の競技団体や東京都、組織委との調整を経てようやくまとめあげ、IOC理事会でも承認した計画に、トップが代わった東京都が手のひらを返したからだ。

 そもそも、IOCが開催都市の五輪計画の現場まで降りてきて直接介入すること自体が異例だ。ある関係者はその理由をこう見る。

「3会場の問題より、IOCは3兆円を超えると指摘された総費用に神経をとがらせているからだ」

 IOCの出方はしたたかだった。協議に先立ち、バッハ会長が小池知事に、

「会場見直しは決めうちせず、複数の選択肢の中で調整したい」

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