企業ロゴが刻まれた石碑の除幕式をする谷川浩道・西日本フィナンシャルホールディングス社長(左端)ら (c)朝日新聞社
企業ロゴが刻まれた石碑の除幕式をする谷川浩道・西日本フィナンシャルホールディングス社長(左端)ら (c)朝日新聞社

 福岡市に本拠がある地銀、西日本シティ銀行や長崎銀行(長崎)などを束ねる持ち株会社「西日本フィナンシャルホールディングス(FH)」が10月3日に発足した。傘下に入ったのは証券会社、カード会社など計7社。2日前には、常陽銀行(茨城)と子会社に足利銀行(栃木)を持つ足利ホールディングス(HD)が経営統合し、「めぶきフィナンシャルグループ(FG)」ができたばかりだ。

『地方銀行消滅』(朝日新書)の著者、津田倫男氏はこう話す。

「全国の地方銀行は今、“戦国時代”を迎えています。地銀64行、第二地銀41行で計105行。経済情勢を勘案すると多すぎる。5年後には多くの銀行が統合や合併で消え、20ちょっとぐらいのグループにまとまるでしょう。歴代、財務官僚が頭取に就いてきた“大蔵銀行”の横浜銀行(神奈川)まで東日本銀行(東京)と統合し、驚いた」

 津田氏は「再編が先行し、最初に決着するのは九州」とみる。

 再編した西日本FH、めぶきFGはそれぞれ除幕式をし、頭取ら幹部がカメラの前で笑顔も見せていた。しかし、マネックス証券の大槻奈那チーフ・アナリストはこう指摘する。

「両社に限らず、地銀の統合効果は決して高くない。『座して赤字を待つよりはマシ』という動きです」

 九州最大の都市で、アジアへの玄関口としても知られる福岡市。その中心部、博多区は秋めく空気などどこ吹く風、熱く燃え盛っている。博多駅周辺で、ホテルの建設ラッシュが続いているのだ。もともと宿泊施設が不足気味だったところに、訪日外国人客(インバウンド)が押し寄せ、需要が急増。少なくとも七つの建設プロジェクトが動き始め、2018年度までに客室が1千室も増える計算だ。

 博多区を含む中心部では、住宅の建設ラッシュも続く。不動産経済研究所の松田忠司・主任研究員は「単身赴任需要が強い。ワンルームマンションなどが堅調な地域です」と指摘する。

 住宅ローン控除などの政策的な下支えに加え、相続税対策の機運も高まった影響か、九州では他の地域でもアパートや戸建ての建設が活発という。人口が減り、空き家が増えているにもかかわらず、だ。経済原則からすれば明らかにおかしい。そもそも、ホテルでも住宅でも、資金の裏打ちがなければ建設は進められない。

 九州にある地銀の現役支店長が内情を明かす。

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