この「違う世界」は、子どもが自然体になる保健室以外では、なかなか見えない。子どもがネットを介して周囲の知らない誰かと付き合っているのに、親が感知していない場合、自分の身を守れるようにするために「避妊に100%はないで」といった個別の性教育をしているという。

 男子にも、ネット依存の子はよく見かける。

 東京の中学校では、ゴホゴホとせきこみながら来室し、ベッドに横になるや寝息をたてだした1年男子がいた。しばらくして目を覚ますと、「昨日は朝4時までぶっ通しでゲームしてた。6時には起きたから2時間睡眠だよ」と話した。

 彼がはまっているのは、スマホ(スマートフォン)のオンラインゲーム。寝床にも持ち込んで、眠りに落ちるまでゲームに没頭しているという。

 養護教諭は子どもの話を聞いて、ただ頭ごなしに叱るということはしない。まずは訴えを受け止め、行動の背景に潜むSOSを探っていく。

 彼の場合はじっくり接するうちに、親の虐待が絡んで夜になると目が冴え、ネット依存を加速させているらしいことが徐々にわかってきた。その情報を他の教師らと共有し、子どもの本当の苦しさを軽減させるべく働きかけていくのが、養護教諭の役割なのだ。

■LINEいじめで“マスク依存”に

 インターネットの普及により、学校生活とネットが地続きになっている面もある。

 東京の別の中学校の保健室では、ネット上でのいじめからマスク依存になった女子の話を聞いた。

 いじめの加害者が、「スクールカースト」と言われる生徒同士の力関係で上位の子に働きかけ、クラスのLINEグループから被害者である女子を一方的に退会させたのだ。

 子どもたちの間で「LINE外し」と呼ばれる、よくあるいじめの手口だ。この女子のケースでは、仮想空間の教室でクラス全員から仲間外れにされるようなもので、大人が想像する以上にダメージは大きい。

 女子は仲間外れにされるだけでなく、他人のふりをした「なりすましメール」で、「死ね」などの罵詈雑言や、悪意ある画像を送りつけられるという攻撃を受け続けた。彼女は正体の見えない相手への不安から、昼夜問わずスマホから離れられなくなった。

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