“若ハゲ”のメカニズムとは?(※イメージ)
“若ハゲ”のメカニズムとは?(※イメージ)

 抜け毛や薄毛に悩む全国1千万人の男性を救うため、髪の毛ふさふさで、独身で、遅めの青春を謳歌している本誌記者(33)が立ち上がった。若ハゲを防ぐ正しい方法とは──。

 抜け毛の仕組みを解明した──。東京医科歯科大学の研究班がそう発表したのは今年2月だった。

 何やら小難しい内容だったが、編集部で話題にしたところ、髪の薄い先輩記者たちが「大ニュースじゃないのか!?」と騒ぎだした。

 自慢じゃないが、私の頭髪は元気潑剌で、頭頂部の毛が「ジャックと豆の木」のごとく上に上にぐんぐん伸びる。美容院に支払う費用がもったいないほどだ。

 そんな私にとって「ハゲ」などひとごとに過ぎないのだが、行きがかり上、黒髪を揺らして取材に走るはめになった。

 冒頭の発表によれば、毛を生やす働きを持つ「毛包幹細胞」というのがある。年を取ると、この細胞が毛髪をつくる機能を失い、フケや垢とともに脱落していく。加齢とともに毛包幹細胞の維持に必要なコラーゲンが分解されてしまうのが要因で、そのコラーゲンの枯渇を防げば毛が抜けにくくなるというのだ。

 ふむふむ。で、そのコラーゲンを補うにはどうすればいいのか。ところが、発表文はそこに触れていない。「本研究成果は、老化の仕組みについて新しい視点を与えると同時に、脱毛症の治療法の開発へと繫がることが期待できる」と結ばれているだけ。研究班に取材を申し込むと、多忙を理由に断られてしまった。

 こりゃ記事にならん。先輩の独身薄毛記者(36)に報告したところ、「コラーゲン以外にも調べることはあるだろう。俺なんて……」と、説教のような身の上話が始まった。先輩はここ数年、1本1500円の育毛剤を1カ月で費消している。何百もの突起がついたヘッドマッサージャーなる道具で頭皮に刺激を与えてもいるとか。

 黒髪で覆われた頭を搔きながら聞いていた私は、指先の感触に深く感謝しつつ、再び取材に入った。

 大阪大学大学院医学系研究科の板見智教授(皮膚科)の著書『専門医が語る 毛髪科学最前線』(集英社新書)を読んだ。それによると、薄毛を気にしている男性は全国に800万~1千万人もいるという。門外漢の私にとっては衝撃的な数字だ。

 薄毛に見舞われると、他人の目が気になり、対人関係、ひいては自分に自信を持てなくなる人もいる。深刻な問題なのだ。

次のページ